【賢い子の育て方】子どもに英語を習得させるのに「英語脳」は本当に必要なのか? 東大助教授が出した答えは…
子育てに直面したときに、巷で耳にする、あんなウワサ、こんな説。それってほんとうに根拠があるの? これまで、気になる論文を読んできた、情報理工学博士の山口先生が、世の中にあふれる「子育て説」を科学の面から一刀両断。現在子育てに悩んでいる方、なにかヒントが見つかるかもしれませんよ! 今回は、「英語脳のつくり方」の関係について、お話しします。 【あわせて読みたい】赤ちゃんに「英語」って意味がある? 実は耳の成長に合わせた学習が大事だった!
「英語脳」はどのようにつくられる?
以前、耳の成長と周波数の話をしました。 母国語となる言語と勉強した他の言語の差について説明をしましたが、「英語を勉強させたい!」という声を多く聞くので、習得について説明したいと思います。 さて、英語を日本語に変換せず、英語のままで理解する、いわゆる「英語脳」をつくるためにどうしたらいいのでしょうか。 それは、言語能力が発達する段階において、つまり未成年のときに、1日4時間以上の生活を英語で過ごすといいと言われています。 逆の言い方をすると、週に1回30分程度英語のレッスンを受けるだけでは英語脳にはなりません。 英語を話すきっかけは掴めるのかもしれませんが、あくまでも母国語は日本語であって、日本語を通して英語をとらえるということになります。 つまり学校生活などほとんどの生活を英語で過ごさない限り、英語脳をつくることはできないのです。
英語の習得に必ずしも「英語脳」は必要か?
いろいろな実験で言われていることですが、未成年の段階で海外で過ごした経験のある子どもが、日本に帰ってきて母国語の日本語になったとき、英語を覚えているかというと、決してそういうことでもありません。 場合によっては、すっかり忘れてしまうという事例も存在しています。つまり、英語脳をつくったからといって、安心できるわけではありません。もちろん英語脳が継続する人もいます。これは習得したあとの家庭での過ごし方が、多少なりとも英語と関係しているのだと感じます。 ということは、英語を話すためには、英語脳である必要性はないのかもしれません。 英語を楽しく学んで、英語を通じて海外の方とコミュニケーションを取ったり、文化を学んだり、生活の幅や楽しみが広がるきっかけになったらいいのではないでしょうか。 週に一度の短い英語教室でも十分にその役目を果たしているのであれば、英語脳をつくることは諦めたとしても、楽しく英語を習得することはできるかもしれません。 ただ、英語を絶対に習得させなければというモチベーションがある場合には、かなりの時間数を英語の中で過ごさせる必要性があるので、その覚悟を持って取り組んだ方がよさそうです。 今後も、理系の研究者が母親になって感じた日々の疑問について、私なりに調べ、考えた結果を共有していけたらと思っています。
【Profile】山口利恵
1児の母親で、博士(情報理工学)。普段は、東京大学大学院情報理工学系研究科ソーシャルICT研究センターの特任准教授として、情報系の研究を推進。また、情報オリンピック日本委員会や国際大学対抗プログラミングコンテストのメンバーとして、中高・大学生の数理情報科学教育の振興にも邁進。趣味はクラシック音楽。