「本当は働き続けたかった」つわりで退職迫られた派遣社員の憤り 執拗に“自主退職”迫る手口とは?
⚫︎行き過ぎた退職勧奨は「退職強要」
退職勧奨に応じる義務は一切ありません。きっぱり断れば良いのですが、現実には断り続ける精神的負担は計り知れないものがあります。 退職前であれば、会社に内容証明郵便を送るなどして、退職の勧奨(強要)をやめさせる方法があります。弁護士の名前で送ればさらに効果が高いでしょう。 それでも退職勧奨が続く場合には、退職勧奨を差し止めるために仮処分を申し立てたり、損害賠償を請求したりすることも考えられます。 もちろん、相談者は、会社に損害賠償を求めたかったわけではないと思いますが、こういった手続きを採ることで、退職の強要を止める大きな効果が期待できます。 なお、こういった手続きを自分で行うのは大変ですし、ましてや妊婦には負担が大きすぎるため、弁護士に相談するのが良いでしょう。
⚫︎後になって、退職の意思表示の効力を争うことができるか
本ケースでは、女性は結局使用者からの退職勧奨に従い、退職することとなっています。このような場合、通常は、残念ですが、使用者からの退職勧奨に応じたものとして、退職届の撤回等はできないと考えられています。 しかし、退職の意思表示が真意に基づかない場合には、退職の意思表示の効力自体を争う余地はあります。 裁判例の中にも、妊娠中の退職合意について、本当に自由な意思に基づいて合意したと認められるのかどうか、慎重に判断する必要があるとしたものがあります(TRUST事件。東京地裁立川支部平成29年1月31日)。
⚫︎立場の弱い派遣社員「あまりに法律違反が多い」
派遣社員は正社員よりも弱い立場に置かれており、こうしたマタハラを受けるケースが少なくありません。 女性によると、勤めていた派遣会社の公式サイトには、産休や育休の制度があると明記されているそうです。しかし、「うちの派遣社員は、子どもがいない人しか残っていない」と同僚から聞いたことがあるといい、制度があっても十分に活用されている状態ではなかったようです。 「そもそも派遣先企業の担当者との面接で、『ご妊娠の予定はありますか?』と聞かれました。これも違法だと思います」 女性は退職勧奨さえなければ、「働き続けたかったです」といいます。「仕事内容は好きでしたし、一緒に働く派遣先の社員の方はとても良い人でした」 女性はマタハラが横行する派遣業界に対し、こううったえました。 「派遣という働き方は、世間にも必要とされていると思います。しかし、派遣という働き方は、法律と実態が大きく乖離している現実があるのだと思います。あまりにも法律違反が多いです。 労働者に本音と建前を使い分けさせながら働かせるよりも、法律を変えるなり、実態を変えるなり、業界全体で動いて欲しいなとは思います」