東京・文京区の空き家問題の影に建築基準法 期限付き“公園”で跡地を活用
現行法の下では家を建てられず
文京区は東京23区の中心部にあります。区内には東京ドームや東京大学などが立地し、都心と言っても過言ではありません。そんな一等地でもある文京区なのに、長らく空き家として放置されてしまう廃屋があるのは不思議な話です。資産価値の高い都心一等地なのだから、有効活用する方法はいくらでもありそうな気がします。どうして、活用する道を模索しないのでしょうか? なぜ行政が税金を使って、空き家を解体しているのでしょうか? 「土地所有者の多くは高齢者ということもあって家屋を手放したくないという思いが強く、不動産を活用するといった意識が乏しいことがあります。さらに再活用を阻んでいるのが、建築基準法の規制です。建築基準法には『接道義務』と呼ばれる規制があり、“道路”に2メートル以上接していない土地では原則的に新しい家屋を建てることができません。道路は幅員4メートル以上なければ、法律的に道路と見なされません。文京区には規制前に建てられた家屋が残っているのです。そのため、現行法下では新たに家を建てることもできない状態です。そうしたことから無接道敷地は資産価値がほとんどなく、売りたくても買い手がつかず、空き家が放置される要因になっています」(同) 文京区は古くからの街並みが残り、“昭和”“下町”といったキーワードで雑誌に取り上げられる人気エリアです。そうした歴史ある街は“建築基準法ブロック”ともいえる問題を抱えているのです。 10年間という期限があるので、跡地を“公園”に転換することは困難になっていますが、ベンチなどを設置したことで地域のコミュニティスペースとして生まれ変わりました。広場では町内会のお祭りや福祉団体がバザーなどをおこなう販売所として活用されたり、学校帰りの高校生などが友達とおしゃべりなどをする場としても使われています。 文京区の広場は、簡易的な“公園”と言える存在になりつつあります。 (小川裕夫=フリーランスライター)