東京・文京区の空き家問題の影に建築基準法 期限付き“公園”で跡地を活用
近年、人口減少が進み、老朽化した空き家の放置が社会問題になっています。手入れのされない空き家は、火事や地震といった防災上でも問題視されていますが、治安悪化などの防犯面でも強い懸念がなされています。また、野良犬や野良猫、カラスといった動物のすみかになることやゴミの不法投棄など、公衆衛生面でも近隣住民から苦情が出て、行政にとっても悩ましい問題です。 空き家とはいえ、個人の財産である家屋を行政が勝手に壊すことはできません。昨今、空き家問題を解決するために、補助金を出して空き家の撤去を促進する自治体も出てきています。家主の金銭的負担を軽減する補助金で、少しでも空き家を減らそうとするのが狙いです。
区が10年間無償で借り上げ活用
東京・文京区は2014(平成26)年から空き家対策事業として、1件につき最大で200万円の除去費用を補助する制度を創設しました。 個人の財産である空き家の解体費用を行政が負担することについては賛否両論あります。多くの自治体は批判的な意見を考慮して、抜本的な対策を講じられていません。そうした背景もあり、空き家は増加の一途をたどっています。 文京区は、家屋の撤去に単に区が補助金を出すわけではありません。区が補助金を出して撤去した空き家の跡地を区が10年間無償で借り上げ、地域住民のために役立てているのです。 「同制度は所有者からの申請に基づき、検討委員会や審査会で跡地の活用方法を協議しています。また、解体撤去しないで済む家屋の場合は、地元NPOなどに紹介して、事務所などに有効活用することも模索しています」(文京区危機管理課) 文京区では同事業を始めるにあたり、「どんな跡地利用をしたら、区民のためになるか?」といった意見を庁内から募集しました。喫煙所やゴミの積替場といった意見も出ましたが、現在は地域の消火装置を設置した防災用地や、ベンチ等を設置した“憩いの広場”として活用しています。これまで、同事業で3件の空き家が除去されて、“広場”に転換されました。 跡地を広場として整備するのには理由があります。都市公園法では、いったん公園になってしまった敷地を元に戻すことは困難だからです。 「法律的な事情のほかにも、10年後は更地に戻して所有者に返還する取り決めになっています。そのため、整備費・撤去費用のかかる施設を設置できないといった事情もあります」(同)