日本の「財政」は危機的ではない。財務省がまとめた国の財政状況“約702兆円の債務超過”は本当か
政府と日銀の役割
ここで押さえておきたいのは、政府と日銀は親会社と子会社の関係性であるという点だ。政府は、日銀に対して55%出資しており、日銀法により役員任命権と予算認可権を握っている。 政府には目標の独立性、日銀には手段の独立性がそれぞれある。つまり、経済政策の舵取りは政府が行い、その方針に沿って日銀は通貨発行などの実務を行う。このように政府と中央銀行を一体として「統合政府」とみる視点が重要だ。 日銀は国内で唯一お金を発行できる銀行だが、無制限に刷ることはできない。個人が何も受け取らずに対価を支払わないのと同じように、日銀も国債を受け取ってからお金を発行する。そのため、日銀が発行したお金の量と、購入した国債の量はほぼ同じになる。 金融政策の本質は「お金を多く発行するかどうか」であり、お金を増やすことで物価が上がりインフレが生じる。これが貨幣数量理論と呼ばれるものだ。
政府と日銀は「親会社」と「子会社」の関係
日銀が大量に国債を買い、それに応じてお金を発行し、金融機関を通じて市場に供給することで、景気を刺激して底上げできる。これが量的緩和で、アベノミクスではこのアプローチにより景気回復の手がかりをつかんだ。 もし日銀が全ての国債を持つようになれば、金融機関から国債がなくなり、財政の問題も解決する。なぜなら、政府の子会社である日銀が国債を全て持つということは、財政の負担がゼロになることを意味するからだ。 現状、それが実現していないのは、国債を保有している民間金融機関が積極的にそれをお金に換えようとしないからだ。詳しくは第5章で解説するが、国債は利回りのいい金融商品なので、金融機関も手放したがらない。 財政出動の際に発行される国債は「新発国債」と呼ばれ、最初は様々な金融機関で取引されて日銀も買いやすくなる。ただし、時間が経過して次第に取引が減っていくと、金融機関の倉庫にしまわれて、埋もれていってしまうのだ。 いろいろと話が脱線したが、ここで最も重要なのは、政府と日銀が親会社と子会社の関係であり、政府の借金は問題ないということだ。