和田優希・千井野空翔 出演舞台『ナイトメアホスピタル 2024』をレビュー【辛酸なめ子の「おうちで楽しむ」イケメン】|CLASSY.
意外と低い魔界の「色欲」のハードル
祐三はベッドでセクシー系の雑誌を眺め「この姉ちゃんのおっぱいでけー」とつぶやき、さっそく「色欲」の罪を犯しました。海外版「PLAYBOY」でしたが、そこまで激しい写真は載っていなそうです。これで「色欲」になってしまうとは、魔界の大罪のハードルは低いです。もしかして、現代の性的な表現に対して規制が厳しくなっている状況を表現しているのでしょうか。苛立つ祐三は妻にますますキツく当たるようになり「出てけって行ってんだよ!」「あいつはオレがいないと何もできないダメな女なんだよ」などと言い放って「傲慢」の大罪のランプが点灯。これはぜひ断罪してほしいセリフです。 次第に祐三と魔界の王の間に友情が芽生えて、子ども時代の思い出を語ります。「クワガタやカブトムシの幼虫を捕まえてネットで売る」と遊びと金儲けを兼ねたエピソードを語る祐三は子どもの頃からスレています。魔界の母親に、学習院ではなく公立の学校に入れられたと恨みごとを語る魔界の王の方がピュアに見えてきます。「嫉妬」の大罪は意外なシチュエーションで発生。へその尾でつながっているので、並んでトイレで用を足す2人。祐三が魔王の下半身をチラ見した瞬間に、嫉妬の感情に襲われランプが点灯しました。さらに神父がトイレに入ってきて、それを見た2人がまた嫉妬という……このシーン、客席の反応も気になります。
日々バージョンアップするアドリブの話題に
「憤怒」の大罪を犯させようと策略を練るシーンでは、妻の恵に不倫させて祐三を怒らせるという計画が企てられました。恵は魔力によって、突然他に好きな人ができて「この人が好きになったの!」と、裕三に週刊誌を見せます。「それ、イノッチじゃねえか。そいつ結婚してんだよ」というシーンにはドキドキしました。社長の名前が出てきて「そいつ」とは……。でも観劇した人のコメントを見たら、週刊誌に載っている人の名前は回によって変わって、イノッチ以外にはキムタクだったり城島さんの名前が出ていたようでした。今,事務所は大先輩をいじれる自由な空気なのかもしれません。また、回を重ねるごとにアドリブも多くなっていたようで、会場の反応のよさに成功体験が積み重なっていそうです。 舞台上では役柄になりきっていた出演者たちですが、カーテンコールではアイドルの表情も見せていました。日によっては千井野空翔が投げキッスしたり、飛び跳ねて手を振っていたりしていた、という目撃情報も。「七つの大罪」には該当していないですが、アイドルも十分罪作りです。
辛酸なめ子 イケメンや海外セレブから政治ネタ、スピリチュアル系まで、幅広いジャンルについてのユニークな批評とイラストが支持を集め、著書も多数。近著は『女子校礼賛』(中公新書ラクレ)、『電車のおじさん』(小学館)、『新・人間関係のルール』『大人のマナー術』(光文社新書)など。