<春に駆ける’23センバツ専大松戸>第3部・指導者/上 球児育成半世紀の名将 「量より質」が持丸流 /千葉
「自分が今も監督を続けていることが信じられない」 2008年から専大松戸を率いる持丸修一監督(74)はこう言って笑う。コーチ時代も含めると、高校球児の育成に携わって半世紀。ごく普通の公立高校も含め、監督を務めた4校すべてで甲子園出場を果たした名将だが、当初は指導者になる気はなかったという。 学生時代は新聞記者志望だった。だが、大学4年の時、母校である竜ケ崎第一(茨城県)の恩師に誘われ、同校のコーチに就任。そのまま教員になった。27歳の若さで監督に就任すると、地元の子どもたちばかりが集まる公立の進学校を1990年、91年と2年続けて夏の甲子園に導いた。 その後に赴任した藤代(同)でも2度のセンバツ出場を果たした。指導を続けるうちに、目の前にいる子どもたちの成長を間近で見られることにやりがいを感じ、高校野球から離れられなくなった。2003年には強豪・常総学院(同)に移り、ここでも甲子園の土を3度踏んだ。 練習の「量」より「質」を重視し、選手の自主性に任せるのが「持丸流」だ。選手たちに「こうしたらどう?」とアドバイスをする一方、監督の助言が最善のものとは限らないとも伝える。試合中のベンチでは、あまりサインを出さない。「送り出したら選手を信用するだけ」と大きく構える。 一部の強豪校に見られるような長時間練習とも距離を置く。平日の練習は3時間ほどで、長期休暇の間も合宿はしない。部員は全員が自宅通学だ。その理由は「特別なことをしなくても、普段の練習で十分だと思うくらい、全力で練習しているから」と明快だ。 投手の育成には特に定評がある。これまでプロ入りした教え子13人のうち9人を占める。専大松戸の監督に就任すると、グラウンドの奥に土を盛り、坂道を作った。アップダウンの激しいコースの走り込みを徹底させ、下半身を強化するためだ。こうした練習が実を結び、今季は層の厚い投手陣を作り上げた。 今春のセンバツは、監督として11度目の甲子園となる。チームを勝たせたい気持ちはいつも同じだが、一番こだわっているのは結果ではないという。「大切なのは子どもたちが成長すること」。駆け出しの教員だったころと思いは変わらない。 ◇ 3月18日に開幕する選抜高校野球大会での活躍が期待される専大松戸(松戸市)。チームを率いる指導者たちの横顔を2回に分けて紹介する。(この連載は近森歌音が担当します)