「ベストナイン選出者&3割打者ゼロ」でも優勝…仙台大が大一番で取り戻した“守り勝つ野球”
「1ミリ手前に落ちていたら…」紙一重だった勝利
平川は元々内野手で、今夏から外野手に転向したばかり。「打線の状態を考えると1点でも取られたらきついと思っていた。自分の前に打球が来たら飛び込もうと決めていました」と決死のダイビングキャッチを振り返る。今秋はチームトップの打率.286を残し、2本塁打もマーク。自ら「打線のキーマン」と称するほどの打撃が持ち味だが、ここ一番で守備でも魅せた。 井尻に代わってマスクをかぶった前田夢翔捕手(2年=鶴岡東)は緊急出場にも動じず佐藤幻を好リード。これまでリーグ戦で捕手として守備に就いたのは1度しかなかったものの、「いつでもいける準備はしていた。普段の練習からいろんなピッチャーと組んでコミュニケーションを取っているので、緊張はしたけど落ち着いていました」と冷静だった。
「本当に勝ち運に恵まれた。いろいろなことが噛み合って、折り重なって、優勝させていただいたという感じがします」と森本監督。平川のファインプレーについても「『三苫の1ミリ』じゃないですけど、あの打球が1ミリ手前に落ちていたら…。勝ち負けは本当に紙一重」としみじみ口にした。 明治神宮野球大会出場を目指し、26日からは仙台六大学野球連盟を代表して東北地区大学野球代表決定戦に臨む。指揮官は「守りの面で盤石だったかというとそうではなくて、いつ負けてもおかしくない要素はいくらでもあった。慢心せず、やるべきことをコツコツと積み上げていく」と勝って兜の緒を締めた。次の舞台でも、「守り勝つ野球」を貫くつもりだ。
(取材・文・写真 川浪康太郎)