「ベストナイン選出者&3割打者ゼロ」でも優勝…仙台大が大一番で取り戻した“守り勝つ野球”
「自力」の守りにも危機感…盤石ではなかった秋
しかし、9月29日の東北学院大2回戦に5対4で勝利した試合の直後、指揮官はあることを嘆いた。 「バッティングは『他力』の部分があって相手投手の力量やいろいろな状況に左右されるけど、守りは『自力』。『自力』の部分で苦しむと先が見えなくなる。守りがこれだけ崩れるとなると、話はだいぶ変わってきてしまう」
この日は内野陣が4失策を喫し、記録に残らないミスも散見された。この試合の前までの8試合は無失策。練習試合でも守りが崩れることはなかっただけに、突然の守乱に危機感を覚えた。ロースコアの展開が続く中、本来の強みであるはずの守りによくない影響が及んでいるのは否めない状況になっていた。
“仙台大の野球”体現したタイブレークの1イニング
それでも、主将の小田倉啓介内野手(4年=霞ヶ浦)が「僕たちが目指してきたのは『守り勝つ野球』。やることは変えずに、今までで一番の準備をして最終節に臨みました。ここ一番に強い選手がそろっているので、福祉大戦に関しては何一つ心配していませんでした」と話すように、最終節では仙台大の強さが戻ってきた。 1回戦は計8四死球を与え再三走者を背負うも本塁は踏ませず、6回に飛び出した田口大智内野手(4年=田村)の3点本塁打で奪ったリードを守り切り3対0で勝利。2回戦も10安打を浴びながらも最少失点でしのぎ、サヨナラ勝利を呼び込んだ。 中でも「守り勝つ野球」が最大限に発揮されたのが、2回戦の延長10回の守りだ。タイブレークの無死一、二塁から先頭打者にバント安打を決められ無死満塁に。しかもこの打者の打席の途中で正捕手の井尻琉斗捕手(2年=北海)が負傷交代を余儀なくされ、絶体絶命のピンチに陥った。
だが、ここからが仙台大の真骨頂。続く打者が三塁方向に打球を転がすと、三塁手の藤江優斗内野手(2年=米子松蔭)が落ち着いて処理し本塁タッチアウト。なおも一死満塁で今度は右翼方向に安打性の当たりが飛んだが、右翼手の平川蓮外野手(3年=札幌国際情報)がファインプレーを披露しこれを阻んだ。最後は投手の佐藤幻が気迫のこもった投球で空振り三振に仕留め、スコアボードに「0」を刻んだ。 仙台大打線は6回からマウンドに上がった東北福祉大・堀越啓太投手(3年=花咲徳栄)の前に1安打に封じ込まれたが、まさに守り勝って優勝をたぐり寄せた。