日本人の「賃金上昇に限界」がある超基本的な理由 日本全体で考えると「やるべきこと」はただ1つ
「お金の本質を突く本で、これほど読みやすい本はない」 「勉強しようと思った本で、最後泣いちゃうなんて思ってなかった」 経済の教養が学べる小説『きみのお金は誰のため──ボスが教えてくれた「お金の謎」と「社会のしくみ」』には、発売直後から多くの感想の声が寄せられている。本書は「読者が選ぶビジネス書グランプリ」総合1位を獲得、19万部を突破した話題のベストセラーだ。 【写真】経済教養小説『きみのお金は誰のため』には、「勉強になった!」「ラストで泣いた」など、多くの読者の声が寄せられている。 著者の田内学氏は元ゴールドマン・サックスのトレーダー。資本主義の最前線で16年間戦ってきた田内氏はこう語る。
「みんながどんなにがんばっても、全員がお金持ちになることはできません。でも、みんなでがんばれば、全員が幸せになれる社会をつくることはできる。大切なのは、お金を増やすことではなく、そのお金をどこに流してどんな社会を作るかなんです」 今回は、日本人の賃金上昇には「限界」がある、その根本的理由を解説してもらう。 ■高い商品を作るか、クビにするか 春闘での約5%の賃上げが「33年ぶりの高さ」ということで話題になっている。とはいえ、これは労働組合に加入している人たちの話。中小企業で働く人が7割を占める日本において、組合組織率は1割にも満たないそうだ。
仮に全体で5%賃金が上がっていたとしても、近年の物価上昇のペースには追いつけず、実質賃金は低下し続けている。 「賃金を上げるには労働生産性を上げること」というのが一般的な見解だ。労働生産性とは、おおまかにいうと、投入する労働に対してどれだけ生産できるかということ。企業の労働生産性を上げるにはシンプルに考えて2つのアプローチがある。 まずは、生産額(生産量×価格)を増やすこと。 しかしながら、日本のような成熟した経済においては、生産量を増やすことには限界がある。買ってもらえる量を増やすことは難しいからだ。リビングにテレビをもう1台置こうとはならないし、食料品を2倍食べようとはならない。