〈不動産価格暴騰〉「都心部タワマン住まい夫婦 vs. 郊外戸建て住まい夫婦」それぞれの離婚に降りかかる、不動産の問題【弁護士が解説】
離婚時の財産分与、不動産の種類で「あからさまな差」
このように、離婚に伴う財産分与にはむずかしい問題がありますが、一方で、不動産の種類によってはあからさまな明暗が生じるという、所有者にはやりきれない実情もあります。 その一例が「都内タワマン」と「郊外の戸建て」のケースです。都心の駅近マンション物件は、少なくともここ数年、価格上昇傾向が続いています。そのため、数年前に購入したマンションが値上がりしてアンダーローン状態になっているマンションも多く、場合によってはかなりの手残りが出るケースもあります。同じ立地のマンションを買い直すのは難しいかもしれませんが、住宅ローンの借金が消えるので、やや郊外の賃貸マンションに引っ越すなどすれば、双方とも綺麗に新生活が始められます。 一方、オーバーローンになりやすい傾向にあるのが郊外の戸建て住宅です。郊外戸建ての物件の特徴として、仮に土地建物あわせて5,000万円の物件であれば、土地2,000万~3,000万円、建物2,000万~3,000万円といった予算配分で建てられることが多く、戸建て建物の占める割合が多くなります。 また、居住者の自由に間取りや内装を決められるのが戸建ての魅力ですが、反面、所有者の好みが色濃く反映されるほど買い手はつきにくくなります。つまり、カスタマイズできるという魅力も、売却の場面ではデメリットになり得るということです。例えば、オーナーが趣向を凝らした高額な注文住宅などは、売却が困難になりがちです。 一方のマンションは、カスタマイズしづらい一方、画一的な間取りであることから、次の買い手も見つかりやすいといえます。
安易なマイホーム購入は、禍根を残す場合も
結婚に憧れたり、夢を持っている方の気持ちへ水を差したいわけではありませんが、いまや3組に1組が離婚するといわれる時代です。自宅不動産という高額な買い物をしたあとで離婚が決まれば、その後の人生にも多くの成約や負担が生じることは必至です。 せっかく結婚したカップルも、不動産を購入したあとで万一離婚になれば、深刻なトラブルとなるリスクがあることを、まず知っておいてください。それを踏まえたうえで、自分たちは不動産を購入するのかどうか、購入する場合はどのエリアの、どのような物件を選ぶのか、慎重に検討していただきたいと思います。 「賃貸・持ち家論争」なども永遠のテーマではありますが、もし結婚された場合でも、自宅不動産の購入は焦らず、子育てが始まり学区などの選択が始まるまで、フレキシブルに方針を変更できる賃貸で様子を見るというのも、無難な選択肢ではないかと思います。 山村 暢彦 山村法律事務所 代表弁護士
山村 暢彦