車掌がオランダ語圏で「ボンジュール」、3公用語のベルギーで物議
【AFP=時事】北部でオランダ語、南部でフランス語、東部でドイツ語の3公用語があるベルギーで、車内検札をしていた車掌が、オランダ語を話すフランデレン(フランス語で「フラマン」)系の乗客にフランス語で「ボンジュール(おはようございます)」とあいさつしたことが政治論争に発展している。 【写真】案内標識の翻訳が英語だけ、仏語保護団体がノートルダムを訴え ベルギーの言語管理常任委員会は19日、AFPに対し、この乗客の抗議を受けて調査中だと述べた。 この出来事は10月、北部のオランダ語圏フランデレン地域のメヘレンから、首都ブリュッセルへ向かう通勤列車でラッシュアワーに発生した。ブリュッセル首都圏は、オランダ語とフランス語の両言語が話される両語圏とされている。 フランス語話者の車掌イリヤス・アルバ氏は「その日、私は車両に乗り込む乗客に『フッデモルヘン(オランダ語)、ボンジュール(フランス語)』と元気よくあいさつした」とフェイスブックに投稿した。 だが、この両言語でのあいさつに不満を抱いたオランダ語話者の乗客の一人が、「まだブリュッセルに着いていないのだから、オランダ語だけを使うべきだ!」と抗議した。 乗客の指摘は法的には正しかった。ベルギーの複雑な言語法によれば、車掌は原則、ブリュッセル首都圏をはじめとする両語圏でのみ、両言語を使用すべきとされている。 言語管理常任委員会は「この件は現在審査中」で、ベルギー国鉄(SNCB)に対し、言語政策の施行に関する追加情報を求める方針を明らかにした。 この問題は、北部のオランダ語話者と南部のフランス語話者の言語的対立が、そのまま政治に反映されがちなベルギーで波紋を呼んでいる。 フランス語話者のジョルジュ・ジルキネ交通相は国会でこの問題について質問された後、「ベルギーのような小国では、地域の境界を越えることが頻繁にある」と述べ、車掌のアルバ氏を擁護。 国鉄の車掌は「質の高いサービス」を優先し、すべての乗客が「適切かつ完全な情報を得られるよう」努めるべきだと述べ、「複数の言語であいさつすることに驚きは感じない」と語った。 だが、オランダ語話者の政治家の一部が異議を唱えた。キリスト教民主フランデレン党(CD&V)のサミー・マディ党首は「そんなに簡単に言語法を無視することはできない」と反論した。 SNCBは言語法の適用に「より大きな柔軟性」を求めた。SNCBの広報担当者は、AFPの取材に対し「複数言語でのあいさつは素晴らしいことだ。われわれはそのことについて車掌たちに感謝するばかりだ」と語った。【翻訳編集】 AFPBB News