年金の男女格差「ジェンダー不平等の積み重ねの結果」 日本の“労働モデル”見直しの必要性を訴え、国際会議に報告書提出へ
年金格差の背景には「性別役割分業」を前提とした労働モデル
全日本年金者組合がILOに提出する予定の文書は、日本における男女間の年金格差や、その背景にある男女の賃金格差の原因として、以下の問題を指摘している。 ・日本の公的年金制度は、夫が家計の中心として働き、妻が主婦として無償のケア労働を担う家庭を「標準モデル」にして制度設計されていること。 ・男性は基幹的業務や総合職に配置されるのに対し女性は補助的業務や一般職に配置される傾向があり、結果的に男女で選択できる役職に差が生じていること。 ・1985年の男女雇用機会均等法制定以前には結婚退職制や妊娠退職制が存在しており、退職を余儀なくされた女性が多くいたこと。また、制定以後も、出産や育児によるキャリアの中断があること。 ・結婚や出産のために離職した女性が再就職しようとしても、パート労働や派遣、有期雇用などの身分が不安定で低賃金の非正規雇用が多いこと。 廣岡副委員長は「賃金格差の大きな要因は男女間の役職の違いと勤続年数」とする日本政府の見解を批判し、性別役割分業や長時間労働を前提とする日本の労働モデルの見直しが必要であると語った。
2023年に告発集を発行
2023年2月、全日本年金者組合女性部は「女性の低年金」の実態を収集して告発するため、冊子『聞こえますか…今、ここにある窮状 175 の声』を発行した。 会見では、中川滋子・女性部長が「冊子の作成を通じて、男性の組合員には図れないような、女性のおかれている現実が分かった」と語った。 「国際的にみても、日本の年金の状況はひどい。国連女性差別撤廃委員会やILOへの訴えを通じて、その事実を明らかにしていくつもりだ」(中川女性部長)
弁護士JP編集部