イーロン・マスクの「イノベーションの方程式」。効率的にアイデアを生み出す方法
イーロン・マスクは、史上もっとも偉大なイノベーターの1人として尊敬を集めています。 しかし、彼のすごいところは、抽象的な複雑さではなく、ストレートなシンプルさに根ざした天賦の才があることです。 どれほど荒唐無稽に見えるアイデアでも、ビジネスとして大成功させることができているように見えるのは、この才能があればこそ。 しかし、実のところ彼は思いついたアイデアやイノベーションをすべて追求しているわけではなく、シンプルな「イノベーションの方程式」を使って、本当に追求する価値があるかどうか判断しています。 これは多くの起業家が見落としている重要なステップであり、そのせいで盲目的に何かを追求することにつながってしまいます。 MITのAIの研究者であるLex Fridmanとのインタビューで、イーロン・マスクはDan Carlinの『Hardcore History』を「史上最高のポッドキャスト」と呼び、イノベーションの追求について語っています。 その際に、彼の意思決定プロセスの核心とイノベーションの方程式を明らかにしているのです。
イノベーションの方程式
イーロン・マスクはこのように語ります。 重要なのは、イノベーションの早さ、リソースへのアクセス、そして原材料です 起業家は、このシンプルな方程式を使うことで、荒唐無稽なアイデアを実現するために必要なものが自分に揃っているかどうか、迅速かつ容易に判断することができます。 この方程式は、次の3つの基本的な質問に分解できます。 スタートアップを構築するためにどのくらいの時間が必要か。 適切なリソースを利用できるか。 必要な原材料を入手できるか。 どの起業家にとっても、これはスタートアップを追求するうえで欠かせない重要なステップです。 時間、お金、エネルギーを大幅に節約できるだけでなく、投資家が創業者に尋ねる悪名高い質問の1つに答えることができます。 その質問とは「なぜあなたはこのビジネスをはじめようとしているのですか。そして、あなたのチームはこのビジネスを成功させるために必要なものを持っていますか」というものです。 これは「創業者のジレンマ」と呼ばれますが、イーロン・マスクはその解決策を見出しました。 1. イノベーションの早さ 時間は重要です。必ずしも最速でビジネスを構築する必要があるわけではありませんが。 しかし、適切なタイミングでイノベーションを起こせることが必要です。 特に、イノベーションを起こそうとしている人たちは、一般的に迅速にイノベーションを起こし、競合他社に先んじようとしています。 多くの場合、それはレースのようなもので、あらゆる分野で膨大な数の競争が行なわれているため、先頭に立つことが成功につながります。 そこで「スタートアップの構築にどれくらいの時間がかかるのか。そして、それは目標を達成するために必要な時間枠の範囲なのか」という質問が生じます。 2. リソースへのアクセス 適切な早さに加えて、適切なリソースへのアクセスも必要です。なぜなら、リソースは起業家のイノベーション能力を示すものだからです。 リソースがなければ、アイデアは単なるアイデアでしかありません。 必要なリソースがないまま何かを追求すると、イノベーションを起こすことよりもリソースを追求することに多くの時間を費やしてしまうことになります。 適切なネットワークや適切な人材など、手元に自分が計画しているようなイノベーションを起こすためのリソースがあるかどうか、自問してみましょう。 3. 原材料 最後に、イノベーションを起こすためには、物理的なリソース、つまり原材料を用意する必要があります。 多くの場合、原材料はスピードの面でスタートアップ企業の足かせになります。 しかし、原材料の調達に苦労することは、原材料に依存するスタートアップ企業にとって不利益になることも。 たとえば、テスラ社の場合はイノベーションを起こせる人材だけでなく、そのために必要な希少で入手困難な材料(グラファイトなど)があることを意味します。 天才的なアイデアとそれを支える優秀なチームがあっても、イノベーションを実現するために必要な材料が手に入らなければ意味がありません。 今後アイデアの実現性について考えるときは、イーロン・マスクの「イノベーションの方程式」のことを考えてみましょう。 「時間+人+原材料=イノベーションの能力」です。 この3つの変数で構成されるシンプルな方程式を適用することで、イーロン・マスクのように効果的にビジネスを立ち上げることができるようになります。 より早く、より簡単にアイデアを発掘し、自分にもっとも適したアイデアに投資することができるようになります。 その結果、より効率的に、もっとも実現可能性の高いアイデアや、成功するために最適なアイデアを見つけることができるようになります。 言い換えれば、適切なスタートアップのアイデアを選択できるようになります。 ──2022年5月13日の記事を再編集のうえ、再掲しています。 訳:春野ユリ Source: TIME, LexFridman, YouTube, HarvardBusinessReview, ALCAD, BARRON'S, TechCrunch
春野ユリ