水素燃料のドローン 福島県浪江町に開発拠点 茨城県の企業進出 産業人材育成、地域振興へ 来年10月以降操業開始
水素を軸とした新エネルギーを燃料とするドローンの研究・開発拠点が福島県浪江町にできる。茨城県の企業が進出し、長時間の飛行が可能な最新鋭の機体の実用化を目指す。「水素タウン構想」を進めている町は関連産業の一層の集積と水素の需要拡大につながると期待。会社側が施設を地域に開き、町の活性化を後押しする構想を持っていることから、連携して産業人材の育成や地域振興、交流人口の拡大につなげたい考えだ。 浪江町に研究・開発拠点を構えるのは茨城県日立市で電気工事業などを営むイガラシ綜業。常磐自動車道浪江インターチェンジ(IC)近くの約7600平方メートルの土地に事務、作業、開発の3棟を建てる。2025(令和7)年10月以降の操業開始を見込んでいる。 水素を燃料とするドローンはバッテリーと比べて充電が早く長時間、運航できる。主に道路や橋などのインフラ設備の点検用として開発を進める。総工費は5~10億円。国の自立・帰還支援雇用創出企業立地補助金を活用し、地元から5人以上の新規雇用を想定している。
同社は施設内で子どもがものづくりの魅力に触れる教育プログラムを展開する。県内外から子どもを受け入れ、おもちゃメーカーなどの協力も得て将来的にはドローンの組み立てや操縦を学べるようにする。茨城県内でドローンを使った競技「ドローンサッカー」やeスポーツのイベントなどを開催して地域活性化に寄与しており、ノウハウを生かし、施設を拠点に浪江の復興を後押しする。 町には現在、四つの産業団地が整備され、福島ロボットテストフィールド(ロボテス)や福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R)など17社が立地する。エフレイが町内に事務所を構えるなど、ロボットやエネルギーなど最先端の産業集積が進む一方、地域間の連携や町のにぎわいにつなげられるかが課題となっている。町は産業振興やにぎわいづくりに向け、イガラシ綜業と協議を始めており、「ドローンを絡めたイベントや町の行事への出店など、雇用だけでなく新たなにぎわいが生まれれば」(町産業振興課)と期待を寄せる。
五十嵐則夫社長は東日本大震災と東京電力福島第1原発事故発生後、町内で太陽光発電の工事などに携わった経験から「浪江を第二の古里と思っている。人が集まる地域づくりにつながる拠点を目指す」と話した。