カリスマ経営者ほど我が子がバカに見える/中小企業の「第2創業」、親子の対立を超えるには~入山教授インタビュー全4回の3回目
事業承継で中小企業が新事業を成功させる「第2創業」が実現すればすばらしい。しかし、特に同族企業では、事業を誰にどのタイミングで手渡すかということについて、「家族関係」という大きなハードルが立ちふさがる。同族企業における事業承継をどのように進めるべきなのか、入山章栄早稲田大学大学院教授に聞いた。 【動画】事業承継は人間同士の泥臭いぶつかり合い。入山教授インタビュー③
◆正解なき、人間同士の泥臭いぶつかり合い
――事業承継がうまくいけば会社が変革し、第2創業を迎える例が多いことはよくわかりました。ではどのように事業承継すればいいのでしょうか。 事業承継はこうすればいいよ、と言うのは難しいと思います。 事業承継は、ものすごく泥臭い「人間と人間とのぶつかり合い」だからです。しかも、親と子のぶつかり合いが一番多い。 僕がいくら経営学者で理論的に立派なこと言っても、うまくいくかどうか分かりません。 親と子の間で株を渡す、事業を渡していくという大変なことを、お父さんやお母さんも覚悟決めてやらないといけないし、息子さんや娘さんも覚悟を決めなければいけない。 そこに何らかの理屈があるわけでもないし、手続きが法律で決まっているわけでもない。 それをどうやって乗り越えていくかが、最も重要なポイントです。 ところが、こうすれば絶対成功するというパターンはありません。 うまくいくパターンはいくつかあるにはありますが、経営には人間臭いところがあるので、ケースバイケースです。 だからこそ事業承継者が悩んでいるのです。 ――事業承継のいろんなケースをご覧になってきて、うまくいくパターン、ダメなパターンなどと類型化できませんか? 僕の中では類型化して、一応理論付けをしています。 ただそれでは説明できないような例もあり、本当のところはよく分からないのが実情です。 「賢者の選択サクセッション」の番組で取り上げる西松屋さんは、びっくりするぐらい事業承継がうまくいっているのですが、なぜだが分かりません(笑)。 親子が喧嘩するのが普通なのに、西松屋さんの場合はまったく衝突もなく、事業承継がスムーズに進んでいるからです。 そこがなぜだかわからないのです。