「危険運転」進路から逸脱なければほとんど認定されず…「194キロ」判決は逸脱なく認定「新たな視点」
大分市で2021年、時速194キロで乗用車を走行させて右折車に衝突し、同市の会社員小柳憲さん(当時50歳)を死亡させたとして、自動車運転死傷行為処罰法違反(危険運転致死)に問われた元少年(23)の裁判員裁判で、大分地裁は28日、危険運転と認定し、懲役8年(求刑・懲役12年)の判決を言い渡した。辛島靖崇裁判長は「常軌を逸した高速度で危険極まりない」と述べた。高速度運転を重視して危険運転と認める判決は異例。 【イラスト】事故状況のイメージ…小柳さんの車が右折中に194キロで走行する元少年の車が衝突
高速度運転による事故で危険運転にあたるかが争われた裁判では、進路からの逸脱がなければ認められないケースがほとんどだ。しかし、進路に沿って走行していた今回の事故で、判決は危険運転の適用要件の「制御が困難な高速度」について「逸脱せず進行できる場合も含まれることを前提としている」とし、「危険運転」と認めた。東京都立大の星周一郎教授(刑法)は「進路を逸脱しなくても『危険運転』と認めた例は聞いたことがなく、新たな視点の判決」と指摘する。
高速度運転を巡っては、過失運転致死で起訴された後に、遺族らによる署名活動を経て危険運転致死への訴因変更が認められるケースが相次ぎ、遺族らから危険運転について「適用が限定的で要件があいまい」という声が上がっていた。
こうした状況を受け、危険運転致死傷の要件見直しに向けた議論をしてきた法務省の有識者検討会は27日、速度の数値基準の導入など法整備を求める報告書を取りまとめた。今後、法制審議会に諮問し、具体的な数値や要件を固める見通しとなっているが、星教授は判決について「法改正の議論とともに、今後の高速度運転を巡る公判にも影響を与える可能性がある」としている。