「えっ、ないやん」京都市の老舗銭湯で人気漫画の原画盗難 経営者沈痛「匿名でいいから返して」
京都市上京区の老舗銭湯「長者湯」で、脱衣場に飾ってあった人気漫画「バガボンド」の複製原画が何者かによって持ち去られた。客から譲り受けた迫力に満ちた絵で、店主らは「とてもショック。寄贈してくださった方にも申し訳ない」とし、無事に戻ってくるよう願っている。 【写真】「日本最東端の駅名標」盗まれる
長者湯は1917年創業。精巧な欄間や金閣寺のタイル絵など、情緒にあふれたしつらえと、地下水をまきで沸かした湯が多くの人に愛されている。
客からプレゼント「かっこええなあ」
バガボンドは、バスケットボール漫画「SLAM DUNK(スラムダンク)」でも知られる井上雄彦さんの作品で、剣豪宮本武蔵が天下無双を目指す姿を圧倒的な画力で描き出している。
3代目の間嶋正明さん(67)や4代目の健太さん(41)によると、複製原画は8年ほど前にもらった。60歳くらいの男性客が「自分が持っていても意味がないので、ぜひこちらで飾ってほしい」と申し出たという。
当時、長者湯では健太さんが好きで読んでいたバガボンドを置いていた。男性客が以前に来た時に漫画があるのを見て、再度訪れた際に複製原画を持参し、寄贈の意向を伝えたとみられる。正明さんは「おそらく近所の人ではないか。その後は見かけていないと思う」と語る。
帯刀してたたずむ宮本武蔵の後ろ姿が描かれた絵は縦30センチ、横20センチ。盗まれてはいけないからとコピーを飾る話も持ち上がったが、「くださった方に失礼」と思い直す一幕もあった。それほど「すごい迫力があった」と正明さんは振り返る。
誰もが目にする場所に飾ろうとすると、寄贈者から「あまり目立たないようにしてほしい」と頼まれたため、坪庭を望み、ドライヤーを使う辺りの壁に、買ってきた額に入れて掛けていた。
目にする度、健太さんは「かっこええなあ」と感じていたという。客も引きつけられ、「写真を撮りたい」「ハウマッチ?」と言われたこともあった。
「家族一同悲しんでおります」
異変に気づいたのは、9月13日の午前11時ごろ。いつものように掃除していた健太さんが絵がないことに気づいた。「えっ、ないやん!」と驚いた。