なぜ再び円安なのか? ── 理解のカギはマイナス金利 岡山大学准教授・釣雅雄
なぜ円安か?を考えるとき、実は注目したいのは、12月3日に2年国債がはじめてマイナス(-0.003%、流通市場、財務省データ)となったことです。マイナス金利とは、国債を買っても、その利子をむしろ支払わなければならないという条件です。そんな異常な状況が生じています。これが今回の円安を理解するカギです。
(1)日・米の2つの要因で生じた円安
今回の円安は2段階で生じています。1段階目は、「安定しない為替市場を読み解く」(10月27日)の記事でみたような、米国側の要因です。8月下旬のジャクソンホールおよび9月17日のFOMC声明がきっかけで、米FRBの量的緩和終了と利上げ観測が生じました。そして、為替レート(東京インターバンク相場15時時点、日本銀行データ)は以下のように変化しています。 8月19日 102.6円/ドル 9月17日 107.3円/ドル 10月30日 109.18円/ドル このような米国側の要因はまだ残っています。けれども、最近の急激な変化は、10月31日に発表された日本銀行の追加金融緩和が加わったものだと思われます。 ここで、最近の変化が「円安」(日本要因)なのか「ドル高」(米国要因)なのかを考えます。ドルが円以外の他の通貨に対しても増価しているのであれば、背景に米国要因があることになりますが、次の図をみると、最近の変化は円安(日本要因)でもあることが分かります。 図は10日移動平均(%)、すなわち10日(営業日)前の為替レートと比較した変化率で、ドル/円、ドル/ユーロ、ユーロ/ドルの3つの為替レートを示しています。
これら3つのグラフは10月末まではほぼ同じ大きさで動いていますが、11月に入ると、赤い線のドル/ユーロがそれほど変化していない一方で、青い線のドル/円が大幅に大きくなっています。すなわち、今回の円安はドルだけではなく、円がユーロなど他の通貨に対しても安くなったことを意味します。 ただ、依然としてドル高も残っています。米国要因と日本要因とダブルで円安を引き起こしているのです。