小坂菜緒の使い方がニクい…映画『ゼンブ・オブ・トーキョー』全編に詰まった日向坂46らしさとは? 評価&解説レビュー
小坂奈緒が劇中でも憧れのアイドルとしてきらめきを放つ!
そして、アイドルの有川凛(小坂菜緒/日向坂46二期生)に憧れる班員の桐井智紗(渡辺)は、この日オーディションに参加しようとしていた。四期生の先輩でもある小坂菜緒が、劇中でも桐井憧れのアイドルとしてきらめきを放っており、ファンにとってはうれしいところ。 だが桐井は担任教諭に有川凛とのチェキをケースに挟んでいた携帯電話を没収されてしまう事態に。事情を知った池園は、そのチェキが心の拠り所だった桐井のために携帯を取り戻そうと班員たちに助けを求め…。 池園が単独行動で起こした奇跡や、それぞれが過ごした時間で芽生えた感情が発端となり、全員が結託することになるストーリー展開が見事。そんな彼女たちの大作戦も見応え十分で、スリルとともに青春味も存分に味わわせてくれた。 終始ヒール的な存在として描かれていたタクシー運転手・五十嵐(真飛聖)も、本作に欠かせない物語のスパイスになっていることも特筆したい。
疾走感あふれるConton Candyの主題歌にも注目
主題歌は、TikTokでも話題となった「ファジーネーブル」で人気を博した3人組ロックバンドのConton Candyによる「急行券とリズム」。Vo/Gの紬衣が“おひさま”(日向坂46のファン)であったことをきっかけに、主題歌を務めることに。「“何色にも染まらず、自分らしくいて欲しい”というメッセージ」(紬衣)が込められたという本曲を、「疾走感も爽やかさもあり最高の楽曲」と正源寺も絶賛。ジェットコースターのようにスリリングでハイスピードな彼女たちのストーリーを彩り、青春の大事なひとときに寄り添っている。 2015年に欅坂46(現・櫻坂46)のレギュラー番組「欅って、書けない?」(テレビ東京)番組内で、ひらがなの「けやき坂(ひらがなけやき)」が新設され、2016年に始動した「ひらがなけやき」が2019年2月に「日向坂46」に。そんな紆余曲折を経て誕生した日向坂46は、“日向”の名にふさわしく、“ハッピーオーラ”を届けるパフォーマンスで観る者を明るくポジティブにしてくれている。 日向坂46のファンは“おひさま”と呼ばれるが、“日向”はおひさま(=太陽)がないと成り立たないものゆえに、自分たちを照らしてくれる存在=ファンに対し、彼女たちがいつも感謝の言葉を発しているのが印象的。そんな関係性もあってか、ライブでは会場全体にほっこりとした空気が充満している。本作もまた彼女たちのライブパフォーマンスのように、メンバー自身も観客も、みんなが温かな気持ちで包まれる 日向坂“46イズム”を感 じずにはいられない一作だ。 タイトルに冠された“ゼンブ”には、自分一人だけじゃなく、かけがえのない時間を仲間と呼べる“みんな”とともに共有できることがハッピーであるという“奇跡”とも呼べる願いが込められている。そうした奇跡を軽やかに描き、観る人を巻き込んで思わず笑顔にさせてくれる、日向坂46ならではの青春映画をぜひ味わってほしい。 【作品情報】 『ゼンブ・オブ・トーキョー』 出演:正源司陽子、渡辺莉奈、藤嶌果歩、石塚瑶季、小西夏菜実、竹内希来里、平尾帆夏、平岡海月、清水理央、宮地すみれ、山下葉留花、小坂菜緒、真飛聖、八嶋智人 監督:熊切和嘉 脚本:福田晶平、土屋亮一 配給: ギャガ (C)2024 映画「ゼンブ・オブ・トーキョー」製作委員会 【著者プロフィール:小松加奈】 ライター/編集者。音楽・映画・ドラマ・アニメなどのエンタメ系を中心にインタビュー/レビュー/コラム記事などを手掛ける。フジロックは初年度から参加。プロ野球好き(横浜DeNAベイスターズ推し)。ジャンルを問わず、心を動かすもの/ことに夢中。
小松加奈