極上エクスプレス・アウディ 新型 S6 e-トロン・スポーツバックへ試乗 見事に調教された「野獣」
システム総合で550ps 0-100km/h加速は3.9秒
新しいA6を、アウディは前衛的な電動のアッパーミドルクラスだと表現する。不満ない航続距離を備えた、高性能なエグゼクティブ 4ドアクーペとステーションワゴンだ。そしてもちろん、その上には更に高速なS6が存在する。 【写真】見事に調教された「野獣」 アウディS6 e-トロン・スポーツバック 競合クラスのEVたち (137枚) スペックシートには、「S」を名乗るのに相応しい数字が並ぶ。システム総合での最高出力は、ローンチコントロール時で550ps。最大トルクは85.5kg-m。0-100km/h加速は3.9秒でこなすという。 ツインモーターの四輪駆動で、リア側は380psと59.0kg-mを発揮する永久磁石ユニット。フロント側には、190psと28.0kg-mを発揮する非同期ユニットが組まれる。通常は503psで、0-100km/h加速は4.1秒。これでも不満なく速いといっていい。 アダプティブ・エアサスペンションが標準装備で、アルミホイールは21インチ。インテリアは、ワイドなモニターパネルとナッパレザーのシート、アンビエントライトでモダンに仕上げられる。 当初英国へ導入されるS6は、ほぼフル装備のクワトロ・エディション1仕様のみ。パノラミック・ガラスルーフは、お好みで透明部分のパターンを選べる。価格は9万7500ポンド(約1901万円)とお安くないが、これ1択と考えれば、悩む時間は減るはず。
極めて高い洗練度 見事に調教された野獣
S6で公道へ出てみると、期待通りに素晴らしい。A6と同様に、洗練度は極めて高く落ち着いている。目的地を安楽に目指せるクルマとして、速さは間違いないはずだが、一部のバッテリーEVが強みとするような攻撃的な印象はない。 パワーデリバリーは文句なしにたくましいが、リニアでシームレス。見事に調教された野獣、といっても良いかもしれない。背徳感すら漂う優越的な雰囲気を、筆者はとても気に入った。 必要なパワーを正確に引きだせるだけでなく、アクセルレスポンスは鋭敏。カーブの途中できっかけを与えて、少しリアを遊ばせることもできる。スキール音を鳴らして。 本気でワインディングを駆け回りたい時は、ドライブモードはダイナミックが良い。トラクション・コントロールをスポーツに切り替えると、自由度の高い振る舞いになり、楽しい時間を過ごせる。 車重は2400kgと伝えられている。この重さだから、アンダーステア傾向が強いとしても疑問はない。それでもアクセルペダルの加減で、狙い通りのラインへ調整していける。ステアリングホイールには充分なフィードバックがあり、操る自信を高めてくれる。 だとしても、S6は毅然とした印象を失わない。ドライバーの興奮を誘うタイプではない。取締役会へ出席するエグゼクティブが、おどけて小走りするような、そんな心象に似ているかもしれない。 エアサスペンションは、引き締まった姿勢制御を維持しつつ、路面の不整を平然と対処。乗り心地は、感動的ですらある。