どうやっても結婚相手と出会えない…人類学の視点から解く「婚活パーティーの本質」
「婚活パーティー」の文化理論
さらに、そうした「制度」がいったん確立されると、今度は、その「制度」が個人の「欲求」を促進したり、抑え込んだりするようになります。たとえば村の人口が減ると、自治体がお見合いパーティーを開いて個人の生殖への「欲求」を促そうとするでしょう。実際、町を挙げての婚活パーティーは、いまの日本でも盛んに行われています。それもある意味で、マリノフスキの文化理論で説明することができます。 では、マリノフスキはなぜ個人の「欲求」の充足という観点を重視したのでしょうか。それは、彼が人間を理解するためには、社会や文化的な次元に焦点を当てるだけでは不十分だと考えたからです。社会的につくられた「制度」は、日常の人間の活動をつうじて個人の「欲求」を充足させたり、抑制したりすることに深く関わっています。だからこそ人間理解のためには個人の生理的・心理的次元にまで目を向ける必要があるというのが、彼の仮説でした。 彼は、人間社会全体を知るためには、ひとりひとりの人間の心のありように注目しなければならないと考えたのでした。社会や文化、生理や心理のそれぞれをバラバラに捉えていたのでは、人間の「生の全体」の理解に到達することはできません。マリノフスキの文化理論は、人間を知るためには、その生理や心理の次元にまで踏み込んで考察分析するべきだというものだったのです。 さらに連載記事〈なぜ人類は「近親相姦」を固く禁じているのか…ひとりの天才学者が考えついた「納得の理由」〉では、人類学の「ここだけ押さえておけばいい」という超重要ポイントを紹介しています。
奥野 克巳