「ポゼッションに意味はない」指揮官シメオネが断言していたアトレティコの“変貌”。ただし選手たちのキャラクターは変わらない【コラム】
J・フェリックスのようなファンタジスタとわかり合えなかった
アトレティコ・マドリーは、プレーモデルを確立したチームと言える。守備の堅牢さと強度の高いカウンター。ディエゴ・シメオネ監督をボスにした戦闘力は熟成度が極まっている。 【PHOTO】2024年元日開催のタイ戦に挑む日本代表招集メンバーを一挙紹介! 「昨今はポゼッション型のチームになった」 そんな声も聞かれる。 たしかに、攻撃力は上がった。驚くほど、バックラインからビルドアップするようになっている。ボールを大事にするチームに変化した。 「ポゼッションに意味はない」 そう断言していたシメオネが、これほど変わるとは...。 しかし、アトレティコが本質的に変貌を遂げたのか、あるいは派生形的にマイナーチェンジしただけか。それはこれから答えが出る。明確に定義するのは時期尚早だ。 2020-21シーズンから、シメオネは原形をとどめながらも攻撃的サッカーにシフトしてきた。ただし、一進一退。手放しては元に戻り、さらにトライする、という繰り返しで今日に至る。 シメオネは勝利ありきの闘将である。勝つための手段として、ポゼッションを高める必要性を感じたのだろう。その現実的なアプローチが、今の攻撃力を生み出している。 しかしながら、シメオネ自身のパーソナリティと彼が選んだ選手たちのキャラクターは変わらない。例えばアルゼンチン人指揮官は、ジョアン・フェリックスのようなファンタジスタとわかり合うことができなかった。そこに本性が透けて見える。ボール支配率がいくらか増えたとしても、戦い方の気質は同じというのか。 シメオネ・アトレティコは、しぶとさに原点がある。 たとえ攻撃がうまくいかなかったとしても、相手の攻撃を受け止めるだけの守備の老練さがあって、各ライン、各拠点を守る選手たちの強度、連係はとことん鍛えられている。それだけの仕事ができるキャラクターの選手が補強され、配置されているのはあるだろう。スカウティングのところから徹底。そして、相手を飲み込むようなカウンターも隠し持っている。 負けにくいチームだ。 そのメンタリティは変わっていない。 0-1と敗れたバルセロナ戦では、ボールを握る、つなぐという戦いになると太刀打ちできなかった。ボールを持てる選手を徹底的に揃えたるわけではないからだろう。例えばGK一人を見てもヤン・オブラクはポゼッションサッカーには適さない。彼の足元の技術は、むしろ弱点になる。ゴールラインで守る点においては世界有数のGKだが、適性が違うところにあるだけに…。 一つ言えるのは、アトレティコが試行錯誤の中で強くなっているということだろう。彼らはプレースタイルを確立させることで、戦いの幅を広げた。それだけは間違いない。 文●小宮良之 【著者プロフィール】 こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たし、2020年12月には新作『氷上のフェニックス』が上梓された。
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