ジャズの名曲「A列車で行こう」の由来とは? 原語版の歌詞にある答えは
ジャズの名曲の一つ、「A列車で行こう」。曲名を知らなくとも、聞いたことはあるという方は多いのではないでしょうか。アメリカ人のビリー・ストレイホーンが1941年に作曲したもので、ニューヨーク在住だったデューク・エリントン率いるビッグバンドの代表的な曲として知られています。ところで、この曲の名前に使われている「A列車」とは、一体何なのでしょうか。 【画像】ジャズの名曲で歌われた「A列車」とは? その答えは、英語の歌詞を見るとわかります。歌いだしの部分を訳すと、「『"A" Train』に乗ってハーレムのシュガーヒルへ行こう」に。つまりは目的地までの行き方を示した内容です。ここに出てくるA Trainとは、日本でいう「のぞみ」や「はやぶさ」といった列車名ではなく、系統番号のこと。これが示すのは、ニューヨーク地下鉄のA系統です。 ニューヨーク地下鉄A系統は、ニューヨークを南北に貫く複数の地下鉄路線のうち、8番街線を走る急行系統。1932年に一部区間が開業した8番街線は、タイムススクエアやワールドトレードセンター、ウォール街は通らないものの、ニューヨークで初めて、民間事業者ではなく市によって建設された地下鉄という歴史を持ちます。 目的地に挙げられているハーレムは、ここ50年ほどは危険なエリアというイメージが定着してしまいましたが、かつては現代ほど治安は悪くなく、ジャズの聖地として知られていました。デューク・エリントンも、このハーレムの高級住宅街であるシュガーヒルに住んでいたのだとか。つまり、この曲の意味は、「地下鉄A系統に乗って、ハーレムにジャズを聴きに行こう!」ということなのです。「A列車で行こう」の原題は、「Take the "A" Train」。今知られている名前の方が語感は良いのですが、忠実に訳すとなると、「A系統で行こう」の方が適切でしょうか。余談ですが、ニューヨークのハーレムは、イスラム圏が由来のハーレム(大勢の女性に囲われるもの)とは、由来は異なります。 ちなみに、JR九州では、D&S列車(観光列車)として、ジャズ曲と同じ名前の「A列車で行こう」を、主に三角線で運転しています。「大人の旅」がコンセプトであるこの列車の「A」には、天草やアダルト(大人)という意味が込められていますが、名称自体はジャズにちなんだということ。車内や駅では、ジャズ曲の「A列車で行こう」が、BGMに使われています。
西中悠基