各国で年度代表馬を出す名種牡馬「ダルシャーン」 新たな活力源として注目受ける一頭を深堀り
【栗山求(血統評論家)=コラム『今日から使える簡単血統塾』】 ◆知っておきたい! 血統表でよく見る名馬 【写真】エリキングのこれまでの軌跡 【ダルシャーン】 現役時代にサドラーズウェルズ、レインボークエストを破って仏ダービーを勝ちました。種牡馬としても成功し、ダラカニ(凱旋門賞、仏ダービー、リュパン賞)、コタシャーン(BCターフなど米芝G1を5勝)、マークオブエスティーム(英2000ギニー、クイーンエリザベス2世S)といった大物を出しました。ダラカニはヨーロッパの、コタシャーンはアメリカの年度代表馬となっています。 カルティエ賞(ヨーロッパの年度代表表彰制度)が創設された1991年以降、双方の年度代表馬を出した種牡馬はダルシャーン以外にいません。 ミルリーフ→シャーリーハイツ→ダルシャーンと続いてきた底力あふれる2400m向きの血統。生産者であるアガ・カーン四世殿下は、アウトサイダー血統を重んじる哲学を持ち、それを体現したダルシャーンには現代における主流血統がほとんど含まれていません。それゆえにドイツ血統と同じように現代血統のなかで新たな活力源として重宝されています。 ジャスティンミラノ、プログノーシス、ファインニードル、タワーオブロンドンといった活躍馬に含まれており、現在2戦2勝の2歳馬エリキングもこの血を持っています。 ◆血統に関する疑問にズバリ回答! 「ベイヤースピード指数で歴代1位を出したグルーヴィの血は残っていますか?」 ベイヤースピード指数は、アメリカ人の競馬評論家アンドリュー・ベイヤーが1970年代に考案したもので、スピード指数の元祖というべきものです。勝ちタイムから馬のパフォーマンスを数値化し、異なる日、異なる競馬場、異なる距離で走ったとしても、その数値をもとに各馬のおおよその能力比較ができます。アメリカの競馬新聞デイリーレーシングフォームに各馬1走ごとの数値が掲載されており、馬券検討の材料として利用されています。 その数値のなかで歴代ナンバーワンはグルーヴィの「133」。1987年6月21日、ニューヨーク州ベルモントパークで行われたトゥルーノースH(米G2・ダ6ハロン)で記録されました。名手アンヘル・コルデロ・ジュニアを背にスタートからハナに立つと、2着以下に5.3/4馬身差をつけて逃げ切り勝ち。勝ちタイム1分07秒4/5はトラックレコードでした。この年、同馬は米最優秀スプリンターに選出されています。 グルーヴィは引退後、種牡馬となりましたが、残念ながら期待ほどの成績は残せませんでした。わが国ではリトルゲルダ(セントウルS、北九州記念)、マイネアイル(京都牝馬S-2着、ダービー卿CT-2着)などにこの血が含まれています。前者は繁殖牝馬として成功しているので、グルーヴィの血はわずかながら着実に受け継がれていくでしょう。