東大寺で催された御陣乗太鼓の奉納演奏（奈良市で）

　1月の能登半島地震や9月の記録的な大雨で甚大な被害を受けた石川県内の被災地を支援しようと、寺院や飲食店関係者らによるイベントが6日、奈良市内で催された。度重なる災禍からの復興を祈り、参拝者や来場者らに協力を呼びかけた。（栢野ななせ）

　東大寺境内であった「 御陣乗太鼓（ごじんじょだいこ）」の奉納。幽霊や鬼の面をつけた演者6人が「ヤー」と雄々しい声を上げ、激しい動きで太鼓を打ち鳴らした。大仏殿を背景にした気迫あふれる演奏に、国内外の参拝者が大きな拍手を送った。

　太鼓は同県輪島市名舟町で約450年続く伝統芸能で、地元の保存会は30～60歳代の17人が活動し、年間1000回以上の公演をしてきた。震災後、メンバーは避難生活を余儀なくされたが、その後に練習を再開。だが、後継者となる子どもたちが地震の影響で地元を離れ、存続が危ぶまれている。

　今回、伝統継承を支援したいと、東大寺や薬師寺が奈良での公演を企画。会場付近で有志が保存会支援の募金を呼びかけた。

　橋村公英・東大寺別当は「神仏にも届くような音色だったのではないか。復興の力につながってほしい」と話した。

　保存会代表の槌谷博之さん（57）は「ようやく復旧が進んできた時に大雨の被害を受けたが、ふさぎ込んでばかりもいられない。支援への感謝を込め、被災者のためにも思い切りたたいた」と前を向いた。

　奉納演奏は8日にも薬師寺で行われる。

「食で笑顔」テーマのチャリティーも

　奈良春日野国際フォーラム 甍（いらか）別館では、「食で笑顔を」をテーマにしたチャリティーイベントが開かれた。カレーやおばんざい、フランス料理など約30の出店があり、家族連れらが多様なジャンルのグルメを楽しんだ。

　奈良県内のレストランのオーナーシェフらでつくるNPO法人「テロワール」が、食材のPRイベントなどを通じて10年前から交流のある能登の農家や漁師、料理人らを応援したいと主催し、県内外に協力が広がった。収益を今後の支援活動に充てる。

　事務局の女性（56）は「地震を乗り越えても、大雨の被害で営業できなくなったという店も多いと聞いた。同じ食に携わる仲間として、被災地を思う心を現地に届けたい」と力を込めた。