18世紀の絵画、漆黒の闇から実は“悪魔”が覗いていた…修復作業で鮮明に
234年前の絵画作品から、鋭い牙を持ち鑑賞者をにらみつけるような不気味な悪魔が姿を現した。 【画像多数】修復後の作品の様子。暗闇から悪魔が姿を現した! 問題の絵は18世紀の画家、ジョシュア・レノルズによる『ボーフォート枢機卿の死』だ。高さ約2.1m・幅約1.5mの大作で、シェイクスピアの戯曲『ヘンリー六世』より第3幕第3場を描いている。 このたび、イギリスの保全団体「ナショナルトラスト」が6カ月におよぶ修復作業を行った。これまで空白のように見えていた暗闇の部分から、隠されていた悪魔が時を越えて姿を現した。
死の瀬戸際の枢機卿に、悪魔が目を見開く
絵画のモチーフは、イングランドとフランスの王位に就いたヘンリー6世が、大叔父にあたるボーフォート枢機卿の死を目撃する場面だ。 王冠をかぶった王が、年老いた髭面の枢機卿を看取る様子が描かれている。その枢機卿の頭上の暗闇から、牙を生やした悪魔の顔が覗き込んでいる。 画家・レノルズの生誕300年を記念してナショナルトラストは4つの作品を保存するプロジェクトを実施しており、本作がそのひとつに選ばれていた。10月に修復が完了している。 悪魔は作品の発表当初から明確に描かれていたものの、絵画作品にふさわしくないとする激しい批判を受け、発表後わずか3年で修正が加えられた。その後も修復作業時の誤解などにより徐々に塗り重ねられ、悪魔の存在は人知れずかき消されてきた。
悪魔を具体的に描いたことで議論に
発表当時、批評家の多くは、悪魔を明確に表現することに反対していたという。シェイクスピア作品では暗示的要素として扱われるのに対し、はっきりとした姿形を絵画で表現することは幼稚であるとの考えが強かったようだ。 ニューヨーク・タイムズ紙によると当時の批評家たちからは、「我々の注意を分断し、主要人物の重要性を弱めている」など批判的な声が相次いだという。 ナショナルトラストの絵画・彫刻担当シニア・ナショナル・キュレーターであるジョン・チュー氏は、今回の修復作業後の声明で、「1789年にシェイクスピア・ギャラリーで初めて展示されたとき、他のどの作品よりも大きな論争を巻き起こしました」「この怪物のような姿を通じ、詩的な言葉を文字通りに表現させることは、当時の芸術的なルールにはそぐわなかったのです」と説明している。