一体なぜなのか…日本の若者が「自動車整備士」を目指さなくなった「根深すぎる理由」
若者はなぜ整備士を目指さないのか
整備士を目指す若者が激減傾向をたどる背景には、少子化の影響に加えて、若者のクルマ離れや低賃金、過重労働のイメージが定着していることがある。 ちなみに、警察庁の運転免許統計によれば2021年の20代の免許保有者数は1002万4557人で、2001年の1569万9659人より567万5102人、36.1%も低い水準だ。クルマ離れがいかに深刻かを裏付ける数字である。 かつてクルマは若者にとって“憧れの存在”だったが、もはやそうではなくなってきているのだ。クルマへの関心が薄れて、整備会社を就職先として具体的にイメージしづらくなっているのである。 クルマが「機械」ではなく「コンピューター」へと変貌してきていることもある。バンパー一つとっても、いまはセンサーがたくさん組み込まれている。クルマの構造を理解していることはもとより、だんだんコンピューターの知識も求められるようになってきている。短期間での技術革新に対応できないと敬遠する人もいるだろう。 だが、整備士不足にはさらに大きな要因がある。 大学進学率の上昇だ。製造業や自動車整備業界を就職先として考える対象者が18歳人口の減少以上に少なくなっているのである。 18歳人口が減っていくにもかかわらず、文部科学省は大学数を増やす政策をとってきた。当然ながら入学定員割れが常態化する大学が増えた。そうした大学では「入試改革」と称して、かつてならば不合格にしていたレベルの受験生が入学できるよう新たな推薦入試枠などを設ける動きを拡大させてきた。その結果、長らく日本の各産業を下支えしてきた仕事に就く層が薄くなってしまっているのである。 これは自動車整備士だけでなく、他分野の技術者や職人の減少にも通じる話である。 たとえば、第一種電気工事士だ。経産省の資料によれば2030年には2万6000人不足する。空調設備業界では配管施工の担い手は高齢化が進んでいる。このまま電気工事士や配管技能士といった職種の人手不足が続けば、エアコンが故障してもいつ取り換え工事に来てもらえるか分からなくなる。最近の夏は酷暑続きだけに、まさに命とりとなりかねない。 つづく「日本人はこのまま絶滅するのか…2030年に地方から百貨店や銀行が消える「衝撃の未来」」では、「ポツンと5軒家はやめるべき」「ショッピングモールの閉店ラッシュ」などこれから日本を襲う大変化を掘り下げて解説する。
河合 雅司(作家・ジャーナリスト)