<社会インフラを行く!>アーチ橋の夜景の美しさ「五色桜大橋」
東京都足立区の荒川のほとりから眺める「五色桜大橋」は、凛とした構造美を放っている。この土地は五色の桜が咲きほこった桜「荒川の五色桜」の名所であり、米国ワシントン・ポトマック河に咲く桜の苗木は、ここの五色桜から生育されたものであるという。 2002年に開通したこのアーチ橋(橋長146.2メートル、最大支間長142.2メートル)は、首都高速道路の江北ジャンクションと板橋ジャンクションを結び、周辺に点在する桜に負けず鑑賞に値する美しさを持っている。アーチと橋げたはほぼ同じ厚さの部材で作られている。そして、アーチ部分に注意を向けるとその内側に斜めのケーブルが張られていることに気づくだろう。上下それぞれ行き交う首都高は2階建ての構造となっており、これを「ダブルデッキ式ニールセン・ローゼ橋」という(2002年度土木学会田中賞受賞)。 「五色桜大橋」がユニークなのは、その構造だけにとどまらない。行き交う走行車両により振動するそのエネルギーを電気に変え、ライトアップ電力の一部として活用している。スピーカーは電気を振動(音)に変えるが、逆に振動を電気に変えるという原理で108個のLEDが点灯するのである。 アーチ橋の夜景はさらに美しさを増す。夜間のライトアップ時には、アーチの曲線に沿って点灯され、荒川の川面に映る光とあいまって幻想的で優美な情景を醸し出す。 (監修:吉川弘道・東京都市大学教授)