娘は薬半錠で中毒死、パートナーは拳銃自殺──「フェンタニル危機は中国からの化学攻撃
「過剰摂取の根本原因はアメリカ自身」
トーマスは、たった半錠の薬で当時7歳だったアシュリーの娘は母親を失い、2つの家族が永遠に打ちのめされることになったと述べ、同じような経験をした家族が全米各地にいると語った。 「娘が何らかのドラッグを試してみようと思ったのかどうか、そんなことは関係ない」とトーマスは言う。「問題は、それが防げる死だったということだ」 「FF」はここ数年で約40万人のアメリカ人がフェンタニルによって命を落としたと推定しており、その主な原因は中国がフェンタニル生成に使われる化学物質の輸出を抑制していないことで、過剰摂取の急増を助長していると主張している。 4月には米下院の「アメリカと中国共産党間の戦略的競争に関する特別委員会」が、中国がフェンタニル危機の「地理的発生源」だと指摘した。 中国では複数の企業がフェンタニルの原料となる化学物質の製造を行っている。同委員会は、中国政府は2019年にフェンタニル自体の生産を禁止したにもかかわらず、これらの企業に積極的に補助金を出している疑いがあるとした。 米司法省は2023年10月にフェンタニルの密造や密輸に関与した中国の企業と個人に制裁を科すと発表したが、それから1年後の10月24日に発表したプレスリリースの中で、規則が厳しくなっても密造や密輸は適応して活動を続けていると指摘した。
USTRに調査を要求
20年にわたって米中貿易に携わってきた経験を持ち、フェンタニル被害者の遺族グループを代表している弁護士のナザク・ニカタールは本誌に対して、「われわれは中国によるこのような不誠実な約束に何度も裏切られてきた」と述べ、外交が失敗した今、さらに厳しい措置が必要だと主張した。 「FF」はUSTRに対し、フェンタニル危機における中国の役割を調査するよう要求しており、USTRは45日以内に調査を行うか否かを決定しなければならない。USTRは本誌に対して、同組織からの嘆願書を受け取り、現在検討中だとメールで回答した。 調査が行われれば、中国に対して追加関税の導入をはじめとするさらなる制裁が科される可能性がある。在米中国大使館の広報担当者は本誌に対して、中国は原料となる化学物質の製造の取り締まりを含め、麻薬対策では「世界で最も強い決意、最も容赦ないポリシーと最も優れた成果」を誇っていると述べた。 同広報担当者は本誌宛てのメールの中で、「中国は互いの尊重、平等と相互利益に基づいて、麻薬対策でアメリカと協力する準備ができている」と述べた。「過剰摂取の根本原因はアメリカ自身にあることを強調しておきたい。アメリカ政府がより効果的な対策を取ることが必要だ」