「お帰り…」亡き夫そっくりの人形を妻は抱きしめた 作家が布人形に込める”魂”
■人形に声をかけながらの制作 1つ作るのに10日ほどかかります。亡くなった人をしのぶ人形の依頼が多いこともあり、写真や手紙を元に、魂を込めるように丁寧に作り上げていきます。 江口美千代さん「真剣勝負でね、時には顔ができる前に、『話したい』気持ち。『お父さん、頑張ったね』とか、小さい子供だと『まだお母さんの側にいたかっただろうにね』とか自然に声をかけます。『人形には魂が入る』と言うじゃないですか。そうなるともう、ただの人形ではないですよね」 人形に着せる服は、本人が着ていた服を切り出して作られたものです。 江口美千代さん「その辺にある生地を着せても、なんかちょっとそれはあんまり嫌だなと思って。着物でも洋服でも全部解いてしますけど、かえって手間が要りますよ。だけど、そっちの方が思い出としては絶対いいじゃないですか」 ■亡き父の人形に「行ってきます」 福岡市早良区に住む北原さん親子も、江口さんに作ってもらいました。 依頼者の北原さゆりさん「主人です。一体一体江口さんにわがまま言って作っていただきました」 夫の廣幸さんは脳腫瘍で5年間闘病し、4年前に59歳の若さで亡くなりました。 北原さゆりさん「愛情込めて皆さんに、という思いが私にも分かる。触ってみるとふかふかしたり、なんか伝わってくる。本当にそっくりだったので、会った日には『お帰り』って抱きしめました」 生前、仕事熱心だったという廣幸さん。スーツ姿とお気に入りのシャツ姿の2体の人形を依頼しました。両手のお決まりのポーズもそのまま再現されています。 北原さゆりさん「この時計をしていて、ここにずっとはめている。彼にとってはこの時計は外せなくて、江口さんはそこを見ててくれた」 娘の北原梨沙さん「仕事人間だったので、自分も仕事で気合を入れる時は『行ってきます』と語りかけて出ていきます」 ■”そっくり人形”注文が殺到 江口さんの元には、全国から依頼が殺到しています。完成まで4か月待ちの状態です。
江口さんは76歳。これからも大切な人を思う依頼者のために”そっくり人形”を作り続けます。 江口美千代さん「いろんな人生があります。人生ドラマが。そっくり人形も難しいんですけど、気持ちを考えると、手の動く限り作ってあげなきゃいけないな、と思って頑張っています」 「ほのぼの布人形展」は、久留米市の一番街多目的ギャラリーで6月30日(日)まで開かれています。
RKB毎日放送