アニメ推しで堂々参戦も…NECの秘密兵器「PC-FX」は、なぜ次世代ゲーム機戦争に敗れたのか
■ついに禁断のソフトを解禁するも……ライバルが多すぎた!?
動画再生機能によるアドバンテージが得られない事態になったPC-FXですが、もうひとつ大きな武器がありました。それは18歳未満禁止、もしくは18歳以上推奨の、いわゆる大人向けの移植ゲームです。セクシーかつ可愛いヒロインたちが登場するゲームは、PCエンジンの時代から受け継がれた、ある種“伝統”でもありました。 『同級生2』『Piaキャロットへようこそ!!』(いずれもNECアベニュー)など、パソコンで大ヒットしたタイトルが、PC-FXの売りであるボイスつきで移植されるとなれば見逃せませんでした。 これらのタイトルに強烈なインパクトがあったのは事実ですが、さすがにゲームハードをけん引するほどの力はなかったようです。そもそも移植されたタイトル自体それほど多くなかったこと、そしてセガサターンにも大人向けゲームが移植されていたのも痛手でした。ハードの販売台数が上のセガサターンにお株を奪われたとあっては、太刀打ちするのは難しかったはずです。 それに当時のWindowsパソコンのほうでも、ボイスつきのゲームが主流になりつつある時期に重なってしまったこともPC-FXにとって不運だったといえるかもしれません。
■オリジナルゲームに光るタイトルも……
では、PC-FX用のオリジナルタイトルに面白いソフトはなかったのかといえば、そんなことはありません。たとえば、『ときめきメモリアル』の開発スタッフが手がけた恋愛RPG『ブルーブレイカー ~剣よりも微笑みを~』(NECホームエレクトロニクス)は、個人的にPC-FXで一番ハマったタイトルです。 主人公ケインが家訓により嫁探しをしながら、自らが復活させてしまった魔王を倒すというストーリーで、難易度は高かったのですが遊びごたえのある面白い作品でした。当時はPC-FX用ソフトのためか攻略本もなく、友人と一緒に完全攻略同人誌を作ったのも懐かしい思い出です。 また、自由な学園生活を送るRPG風恋愛格闘アドベンチャー『ファイアーウーマン纏組』(NECホームエレクトロニクス)もPC-FX発の傑作です。恋愛要素以上に学園を自由に動き回っての活動が楽しく、部活などで覚えた技をボタンに割り当ててのバトルが非常に楽しかったタイトルでした。 このほかにもSFRPG『虚空漂流ニルゲンツ』(NECホームエレクトロニクス)や、80年代アニメをフィーチャーしたシューティング『超神兵器ゼロイガー』(NECホームエレクトロニクス)、『天外魔境 電脳絡繰格闘伝』(ハドソン)など、コアなゲーム好きを魅了する個性的なタイトルがありました。 ただし、これらのPC-FX発の傑作・良作も、しばらくするとプレステやセガサターンに移植されてしまい、PC-FXだけの優位性が薄れてしまう展開が続いたのも残念な点でした。