台湾選抜に惨敗した投壊侍Jは本当に今「結果を気にしない」でいいのか?
WBCでのV奪回に挑む侍ジャパンが28日、ヤフオクドームで行われた台湾リーグ選抜との壮行試合に5-8で惨敗を喫した。台湾リーグ選抜には、WBC台湾代表が一人もいないが、台湾の国内プロ「ラミゴ」を中心としたチームで、代表以上に油断のできない相手ではあったが、17安打はいくらなんでも打たれ過ぎた。特に先発の則本(楽天)が3回を6安打3失点、2番手の牧田(西武)が2回を6安打4失点、3番手の増井(日ハム)が押し出し四球を与えるなど、先発&第2先発として期待されている3人の調整不足による投壊現象に不安が残った。 しかし、試合後、小久保監督は、「牧田にしろ、則本にしろ、今日は、試したいボールがあったので、あまり結果は気にしていません」とコメントした。 本当に7日後の開幕に向けて「結果を気にしなくていい」というテスト登板だったのだろうか。 第1回WBC優勝メンバーで評論家の里崎智也氏は、こんな指摘をした。 「勝つにこしたことはありませんが、結果より重要なのは内容でしょう。調整だったのか、勝ちにいったのか、投手の意図が、どうだったのかわかりませんが、コントロールが悪すぎました。ことごとく甘く入ったボールを打たれていました。これは仮説に過ぎませんが、まだWBC球に慣れていないのではないでしょうか。ただ、増井のフォークにしても、ストライクが取れないというほどの不適合は見られませんでした。あくまでも、微調整のレベルの不安ですが、開幕までの課題は残しましたね」 増井は、6回に二死満塁からフォークを4連投して押し出しの四球を与えることになったが、滑るWBC球でフォークを勝負所で操れるかどうかを意図したテストであれば、結果は、関係なかったのかもしれない。 だが、里崎氏は、ある疑問を抱いたという。 「疑問だったのはリードです。なぜインサイドを使わなかったのか。台湾打線は、全体的に強くひっぱる気はなく、変化球をセンターから逆方向に打つ意識を持っていました。台湾最強打者と言われている王柏融にしても、そうです。インサイドを使えば、簡単に詰まるのに、ほとんど使いませんでした。調整であったのならば、打たれてもいい、という感覚で、WBC球でどこまでインサイドをいけるかを試す必要があったのではないでしょうか」 則本は、3回一死一塁で、台湾史上初の打率4割超えを果たし(.414)、しかも、29本塁打でMVPと新人王を獲得した台湾最強の打者、王柏融(22)に初球のフォークを簡単に見逃された。ストレートの腕の振りと見分けのつかないフォークを見逃す打者の狙いとしては、変化球待ちがみえみえだったが、インサイドを使わずに「スラッター」と名づけた新球のカットで攻めた。そのボールが少し甘く入ったこともあって、バックスクリーンに特大の逆転2ランを浴びた。左打者への新球の使い方や、使ってはならないカウントなどに気づく意義のある被弾ではあったが、もし150キロをマークしていたストレートで、インサイドを攻めていたならば、里崎氏が、指摘するように詰まらせることができていただろう。 試合後、則本も「後手、後手に回った」と配球ミスをわかっていたのが、救いではあるが。 左対左の対戦となった岡田(中日)も、8回二死一塁から、王柏融にライト線にエンタイトル二塁打を浴びたが、アウトコース一辺倒の配球で、最後は高めに浮いた変化球を狙い打たれた。 「一発勝負の国際試合ではデータがあまりないため打席での打者の反応を感性で感じることが重要になります。実戦の中で、バッテリーの対応力を高めておくという意味でも課題が残ったのかもしれません」 名将であり名捕手だった野村克也氏は、何を投げるかの根拠を導くための基本を「観察、洞察、分析、記憶、判断、決断」としたが、「観察」「洞察」がWBCのようなデータの少ない国際試合に求められるのは間違いない。大野(日ハム)が先発マスクをかぶり、途中、小林(巨人)も出場したが、開幕までの残り3試合では、WBC用の配球、リードというものも試しておく必要があるのだろう。