中国で開館した「安重根記念館」とは? 伊藤博文を暗殺した韓国の独立運動家
中国の旧満州、黒竜江省のハルビン駅に「安重根(アンジュングン)記念館」が開設されました。安重根は、初代総理大臣でのちに初代韓国統監となった伊藤博文を暗殺した韓国の独立運動家です。ハルビン駅は暗殺の舞台となった場所で、安重根は1909年にホームで伊藤博文を「韓国独立主権侵奪の元凶」と短銃で殺害、その後、日本側に引き渡され死刑になりました。日本にとっては「テロリスト」ですが、韓国では日本の支配に抵抗した「英雄」とされています。サッカー東アジアカップの日韓戦ではスタンドに安重根の肖像を描いた垂れ幕が掲げられたこともありました。その安重根の記念館が、なぜいま中国にできたのでしょうか。 【図表】日韓関係をめぐる安倍首相の言動
当初は積極的ではなかった中国
その大きな理由のひとつは昨年末の安倍首相の靖国神社参拝といわれています。 もともと韓国の朴槿恵大統領は、同年6月に訪中したときからハルビン駅に安重根の記念碑を建てることを中国の習近平国家主席に要請していました。当初、中国側は記念碑建立にあまり積極的ではなかったと伝えられています。中国というのは多民族国家で、必要以上に韓国の歴史的人物の安重根を褒めたたえると国内の少数民族である朝鮮族の民族意識を刺激しかねないと危惧したといわれます。日本政府も安重根の記念碑の計画について、韓国はもちろん、中国に対して外交ルートで抗議してきました。
安倍首相の靖国参拝で一変?
しかし、安倍首相の靖国参拝を受けて、中国は態度を一変。朴槿恵大統領から提案されていたのは「記念碑」だったにもかかわらず、ハルビン駅の貴賓待合室を改造して安重根の胸像を飾り、写真やパネルを展示する「記念館」を建てたのです。そのため、日本の新聞などでは「中国が韓国との連携を強化し、日本に圧力をかける意図の表れ」との分析も目につきます。韓国には歴史問題で中国と共闘する狙いがあり、中国は安重根記念館をテコに韓国を外交的に取り込もうとしているというわけです。今年は日清戦争120周年でもあり、中国が日本側に圧力を強めてくる場面も想定されます。