新入幕の白熊

【ベテラン記者コラム】 ユニークなしこ名で人気の白熊が大相撲秋場所で新入幕を果たした。初日はシロクマが描かれた着物で場所入りし「朝に初めて見たけど格好いいと思った」。土俵では再入幕の北の若を撃破して「声援が多くて雰囲気が十両と全然違った。緊張したけど新入幕らしい思い切った相撲が取れた」と胸をなでおろした。初めての懸賞を手にすると「うれしい。まずは師匠（二所ノ関親方＝元横綱稀勢の里）に渡したい」と細い目を一層細めた。 同じ二所ノ関部屋の関脇大の里は中学時代からの1年後輩だ。昇進祝いで一緒に焼き肉店に行った大の里は、「店に電話して予約を取ったら名前を聞かれたので『白熊』と言ったら向こうは戸惑っていた」。支払いは新入幕を喜ぶ白熊が持ってくれたという。 福島・須賀川市出身。中学入学から親元を離れ新潟県で6年間、日体大で4年間鍛えた。大の里とは数え切れないほどぶつかり合い、今も稽古で切磋琢磨する。秋場所初日の前日は大の里とすし店に足を運んだ。支払いは先輩の役目で「十両のときと食べたものは変わらない。おいしかった」と満足げだった。 新関脇だった名古屋場所で、10日目を終え5勝5敗と苦しんでいた大の里は珍しく白熊に弱音を吐いた。ここでも食事をともにし、翌11日目に横綱照ノ富士を撃破。最終的に9勝6敗で場所を終え今場所での大関とりに望みをつなげた。十両優勝を飾った白熊は、「夏に強い白熊といわれるけど、夏は得意じゃない。早く冬になってほしい」と笑いを誘った。 十両3場所目の初場所で、本名の「高橋」から珍しいしこ名に改めて話題を呼んだ。このインパクトのある名は、〝北海の白熊〟の異名を取った元大関北天佑のような筋肉質で色白の体にちなんでおり、老若男女に愛される力士になってほしいとの願いが込められている。 愛嬌のある風貌とは対照的に186センチ、174キロで右四つの攻めは迫力十分だ。二所ノ関親方は「大関、横綱になれるくらいの体はある。あとは自分次第だ。誰もが知っている力士になってほしい」と期待を込める。 「幕内で対戦してみたい力士」を聞かれた際、通常では対戦が組まれない弟弟子の名を挙げた。

「いずれ大の里と優勝決定戦で当たりたい」。家族より長い時間を共有してきた兄弟のような間柄だ。すでに初優勝を飾り関脇まで番付を上げている大の里の姿に「一日でも早く追い付きたい」と刺激を受けている。二所ノ関親方は「自分次第でしょ。優勝決定戦に行くなら今の10倍くらい稽古をやらないと」とハッパを掛けた。出世レースで追いつけ追い越せ。夢が実現すれば、二所ノ関部屋は大相撲界の一大勢力となる。