サイドナヤ刑務所を訪問、アサド政権で大規模な拷問と収容 シリア
(CNN) シリア首都ダマスカスの北郊に位置するサイドナヤ刑務所。シリア各地から愛する人を探す人々が押し寄せ、刑務所へ向かう車列は何キロにもわたって続く。その多くは車を降りて最後の行程を徒歩で移動し、恣意(しい)的収容や拷問、殺人の代名詞になっている施設をめざして丘を登る。 【映像】シリアの悪名高い刑務所、CNN記者が内部に 彼らを駆り立てているのは、「レッドセクション」の通称で知られる地下区域にアサド政権下で収容された数千人が残されているとの噂(うわさ)だ。 南部ダルアーから3人の兄弟と義理の息子を探しに来た女性は息を切らしながら、感情をあらわに事態の切迫性を訴えた。 「彼らはサイドナヤ刑務所のレッドセクションにたどり着こうと、もう何日も試みている。換気が止まったので酸素がなくなり、最後は全員死んでしまうかもしれない。アラーのために彼らを救いたまえ」 空気中には「アラー・アクバル(神は偉大なり)」との叫び声や、機関銃の音が響いていた。群衆が刑務所へ一挙に押し寄せた。レッドセクションの入り口が見つかったのだろうか。男女2人が遅れまいと走ってついていく。女性は幾度となく「神よ、神よ」と繰り返した。 刑務所の中では、ボランティア組織「ホワイトヘルメッツ」の作業員がレッドセクションへの入り口を突き止めようと、一心不乱にコンクリートに穴を開けていた。捜索犬も助けに加わったが、入り口は見つからない。ホワイトヘルメッツは声明で、「未発見の秘密房や地下室の証拠」は見当たらないと述べた。 別の場所では、収容者の家族が愛する人々の運命を知る手がかりを求め、歩き回って政権が残した大量の文書を調べていた。 サイドナヤでは数万人が強制失踪し、「屠畜(とちく)場」の名で知られる刑務所の奥底に消えた。刑務所は大規模な恣意的拘束や拷問の象徴となったが、全てはひとりの男の権力を維持するためだ。 ひとりの女性が12年前に撮影された兄弟の写真を掲げていた。その運命は分かっていない。生きていれば42歳になっているはずだと女性は語り、「彼が会ったことのない娘2人と息子1人が残されている。私たちは彼の生死を知りたいだけ。神が知っている」と話した。 サイドナヤ刑務所で行方不明になった受刑者の家族を代表する団体の一つは、いまだ数千人が収容されているとの噂はあくまで噂に過ぎないのかもしれない指摘した。これはある陰鬱な可能性を暗示する。従来の想定よりもはるかに多くの受刑者が処刑され、親族に知らされないまま処分された可能性だ。