フランス債、過去のスプレッドもう戻らず-極右の過半数回避でも
(ブルームバーグ): 欧州2位の経済大国フランスで実施される国民議会(下院、定数577)選挙の結果、議会の勢力図が塗り替えられれば、経済に広範な影響が及ぶ恐れがある。フランス国債に対し、債券投資家はより高い利回りを何年も要求することになりそうだ。
チューリッヒ・インシュアランスとニューバーガー・バーマンによれば、マリーヌ・ルペン氏が実質的に率いる極右政党・国民連合(RN)が圧倒的過半数に届かなくとも、フランス国債に市場はより高い利回りを引き続き求めると予想される。
ソシエテ・ジェネラルなどは、フランス債相場に重くのしかかる政治不安が2027年の大統領選まで続くと見込む。
欧州議会選でのRNの圧勝と中道の与党連合大敗を受け、マクロン大統領は今月9日、国民議会を解散し、総選挙を実施すると発表した。フランス10年国債のドイツ国債に対する上乗せ利回り(スプレッド)はその後30ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)余り拡大。21日の取引では、一部で節目とみられた80bpに達した。
仏独10年債スプレッド、80bpに拡大-左派連合の支出計画を嫌気
チューリッヒのチーフマーケットストラテジスト、ガイ・ミラー氏は「フランス国債がドイツ国債に対し今後取引される水準のステップは変化した。過去のようなスプレッド水準で再び取引されるとは思えない」と指摘する。
このリプライシングの理由は2つある。世論調査でリードするRNは、フランスの債務負担を巡る懸念が膨らむ中でも大規模な支出が必要となる措置を依然掲げている。ただ最近になって、経済運営への信頼を高めようと公約の一部を撤回した。
さらに、極右が台頭すれば欧州連合(EU)との関係が悪化し、将来的にユーロ圏の存続が脅かされる事態もあり得るとの懸念も出ている。
フランス債利回りが高止まりすれば、経済に広範な影響を及ぼす。同国財務省の試算によると、総選挙実施発表後の利回り水準が1年間続けば、政府の債務負担は年8億ユーロ(約1360億円)増える。5年後もこの水準であれば年間で約40億-50億ユーロ、10年後なら90億-100億ユーロの追加費用が発生するという。