森鷗外も訪れた…創業150年の長崎次郎書店(熊本市)、6月30日で休業 長﨑健一社長「やれるだけのことはやった」
創業150年の歴史を誇り、熊本市中央区新町のランドマークとしても親しまれてきた長崎次郎書店が、30日の営業を最後に休業する。2013年に一時休業した長崎次郎書店の屋号を10年前に引き継ぎ、中央区上通町の長崎書店と合わせて経営してきた長﨑健一社長に思いなどを聞いた。(山本遼) -10年前にどんな思いで引き継いだのでしょうか。 「具体的に何年続けるという目標を定めてはいなかったが、少しでも長く営業したいという気持ちで始めた。(上通の店舗と次郎書店は)同じ書店として共通する部分も多いが、上通の店舗は広い範囲からお客さんが訪れる商店街にあって、より都会的な選書や企画を考えていた。次郎書店は観光客もいるが、基本的には地元のお客さんがメイン。特に土日は近隣の親子連れで来ていただいていた。サンダルでも気軽に立ち寄れるような生活圏内の店として、暮らしに寄り添った選書やジャンル構成を強めに考えていた」
-引き継いでから見えてきたことはありましたか。 「建物の歴史や森鷗外が訪れたエピソードはほかの書店にはなく、市電の通る風景や周辺地域の魅力があり、海外を含めて訪れる方も多かった。熊本地震や新型コロナによる大きな環境変化があり、特にコロナの時は学校や職場に行けない人も多い中で、ほんのわずかな外出時間を使ってたくさんの方が足を運んでくれた。『鬼滅の刃』流行の効果も大きく、地元のお客さまに必要とされているという実感があった」 -30日が最後の営業となります。 「休業のために何かイベントというのは特に企画せず、普段通りに営業する。本当にたくさんのお客さんや地元の方、業界関係の方、著者の方々の応援があって10年間続けられたので、感謝しかない。次郎書店ならではの企画にも努めてきて、ベストを尽くしたので後悔はない」 -やり切ったという思いですか。 「気持ちを込めて次郎書店を再開したので、今回の決断は自分自身残念ではあるが、やれるだけのことはやったし、やらなければ分からないこともあった。やらなければ、後悔していたと思う。上通の長崎書店は、今後もこれまで通り営業していく」