石破首相「爆誕」でいきなり「円高・株安」の大ピンチ…!そのウラで新総裁が明かしていた「衝撃の本音」
ハードランディングも辞さない
筆者は今年5月に開かれた日本政治法律学会の研究大会で、石破氏の講演に対する「討論者」として登壇した。まだ総裁・総理になる可能性を石破氏本人も感じていなかっただろう段階だけに、その際のやり取りは本音が見えると思う。 私から「進んでいる円安にどう対処すべきだと思うか」と聞いたところ、石破氏は「要因は日米金利差なので、日本は金利を引き上げていくべきだ」という趣旨の発言をした。そこで「ここで金利を上げるといわゆるゾンビ企業などが経営破綻し地方銀行が危機に立つなど大きな痛みが出るのではないか」と質した。 これに対して石破氏の答えは、本来淘汰されるべきものが超低金利で生き残っているのだから仕方がない、という反応だった。日本経済の復活のためにはハードランディングも辞さない、という姿勢だと感じた。 実際に首相になって石破氏がどんな政策スタンスを取るかはわからないが、為替市場で大きく円高に動いたのは、石破氏が「利上げ容認派」であることを見越した反応だった。 為替が円高に振れると株価は大きく下がるのが昨今のパターンだ。岸田内閣が「円安容認」とも言える政策を打ち続けた結果、円の価値が劣化し、その分円建ての資産価格が上がるという状況が続いてきた。株式市場の参加者の多くが外国人投資家であることも要因だ。 この「円安・株高」政策を転換した場合、石破首相は当面、「円高・株安」に見舞われることになるだろう。総裁選の最中に「金融所得課税の強化」や「法人税増税」などに言及したことも、目先の株式市場にはマイナスに働く。 岸田首相は、物価高対策として、ガソリンや電力・ガス、小麦粉などに補助金を投入したが、これが財政悪化につながるとの見方から円安に拍車をかけるという悪循環に陥っていた。 石破首相が、経済力を高める抜本的な対策を取ろうとすれば、円高には進むものの、改革の痛みとしての株安が襲うことになるに違いない。岸田首相も就任直後には「金融所得課税の強化」を掲げたが、株価の大幅な下落に見舞われ、方針を撤回している。 石破首相が「円高・株安」という目先の「痛み」に耐え、超低金利時代の負の遺産を整理し、日本企業の収益性を高めることで日本の経済力を高めていくことができるかどうか。本来の「円高・株高」に戻すには、世界の投資家に向かって「日本が変わる」ことを示す日本経済のグランドデザインを首相自身が示す必要がある。
磯山 友幸(経済ジャーナリスト・千葉商科大学教授)