異色のオタクレスラー 世界選手権代表に選出
先日、発表されたレスリングの世界選手権、日本代表メンバーの中に異色のレスラーがいる。フリースタイル125kg級の日本代表、岡倫之(23歳、ブシロードクラブ所属)だ。この名前を見て、思わず笑みをこぼした人はプロレス、またはアニメが好きな人だろう。というのも、プロレスやアニメファンの間で岡は「世界最強のラブライバー」(※仮想アイドル『ラブライブ!』のファン)としてすでに知られた存在だからだ。 岡が、プロレス&アニメファンから大きな注目を浴びたのは、2月のプーチン大統領杯第40回全日本サンボ選手権大会で優勝してメダルをかけた写真がツイッターで拡散されたときだった。サンボ着の下から見えるたくましい体に『ラブライブ!』の美少女たちが描かれたTシャツを着用した様子に驚いたネット上での賑わいが、まとめニュースサイトの項目に取り上げられたのだ。 これまで格闘技選手でアニメ好きを公言する人がいなかったわけではない。元UFC王者のジョシュ・バーネットは『北斗の拳』の大ファンだし、コスプレ入場で知られる長島☆自演乙☆雄一郎もいる。しかし、岡のように、アマチュアのレスリング界で、しかも、重量級の体で美少女アニメTシャツを着る格闘家はいなかった。「良い意味で炎上しました」とそのときの盛り上がりを、岡は嬉しそうに言う。 「それからは、ツイッターやブログで自分が出る試合をなるべく事前に知らせるようにしていました。そうしたら5月のグラップリングの試合の時にネットを通じて僕のことを知った人が初めて応援に来てくれたんです。6月のレスリング全日本選抜のときは早めに告知を繰り返したこともあって、プロレスラーでもない僕に50人ぐらい応援しに来てくれたものだから、ブシロードの木谷高明社長に『もうファンがいるのか?!』と驚かれました」。 岡は、新日本プロレスの経営母体でカードゲーム会社でもあるプロシードの社員だ。日大卒業時には、父が自衛官だった影響もあって「自衛隊に入って五輪を目指そう」と考えていた。新日本プロレスがオリンピックを目指すレスリング選手を育成するブシロードクラブを運営していることは、監督をつとめる新日本プロレスの永田裕志が日大へあいさつに来たので知ってはいたが、そのブシロードクラブは、進路の選択肢に入っていなかった。ところが、コミックマーケット会場で、ブシロードの木谷社長に会ったとき「君、体大きいね。ウチに来なよ」と言われたことで、少しずつ気持ちが変わってゆく。