「確実に嫌な予感」30代嫁が直面した"絶望ワンオペ"…難あり老親4人と愛息2人を"私一人で"という無謀
■想定外の事態 森山さんは結婚後、夫の転勤のため退職し、29歳のときに長男を出産。そして33歳のときに、夫の地方勤務が終了することを見越して夫の実家を二世帯住宅へ建て替える。だが、地方勤務が延長になったため、完成と同時に義両親だけ先に入居することに。 「夫は親孝行のつもりで、まだ住んでもいない二世帯住宅の固定資産税や光熱費だけでなく、お小遣いまであげていたうえ、義両親が使う家電が壊れるたびに買ってあげていました。『一人っ子で、大切に育ててもらったから恩返ししたい』と言われたら、専業主婦の私は何も言えませんでした」 しかし二世帯住宅の光熱費と自分たちが住んでいる賃貸の家賃や光熱費・生活費、二世帯住宅のローンの支払いなど、想像以上に出費が膨らみ、貯金もままならなくなっていく。夫のボーナスが出ても3分の1は住宅ローンの返済に消える。そのうえ、結婚と同時に夫が趣味で購入したクラッシックカーの維持費が重くのしかかってきた。 そこへ追い打ちをかけるように、想定外の第2子の妊娠が発覚し、34歳で次男を出産。翌々年に長男が小学校に上がるため、ようやく地元に戻ることとなった。 ■地獄へのカウントダウン 36歳の森山さん、39歳の夫、6歳の長男、1歳の次男の4人と、先に住んでいた80歳の義父と68歳の義母との二世帯住宅での同居が始まった。 その頃、義実家から車で20分ほどの距離にある森山さんの実家では、60歳の頃に定年退職し、2年ほどの嘱託勤務を経て完全に退職した父親(64歳)と、52歳の頃に退職した母親(63歳)が暮らしていた。 同居していた母方の祖父母は、森山さんが22歳の頃、母方の祖父は80歳で、祖母は82歳で、それぞれ少しも介護らしい介護をすることなく、病院で亡くなっていた。 父親は土地を借り、長年夢だったログハウスを自分で建て、家庭菜園などをしながら、自宅とログハウスを行ったり来たりしていた。一方、これといった趣味のない母親は、友だちとお茶やランチ、買物などをして過ごしていた。 ところが、完全に退職してから数年後、父親はいつしかうつ病を患っていた。心配した森山さんが話を聞くと、「母さんとの生活が嫌になった」と言った。 若い頃から母親は、父親に暴言を吐いた。結婚した後も1~2カ月に1度、森山さんが実家を訪れると、孫たちがいようがいまいがお構いなく、母親は父親の一挙手一投足にケチを付け、舌打ちし、「死ねばいいのに!」と毒づいた。それでも父親は一切言い返さなかった。おそらく父親のうつ病は、定年後、夫婦で顔を合わせる時間が増えたことによる発症だったのだろう。 森山さんは、二世帯住宅で義両親と同居をしながらの幼い息子たちの子育てと、実家の両親の不仲と、多くのストレスを一身に背負い込むこととなった。(以下、後編へ続く) ---------- 旦木 瑞穂(たんぎ・みずほ) ノンフィクションライター・グラフィックデザイナー 愛知県出身。印刷会社や広告代理店でグラフィックデザイナー、アートディレクターなどを務め、2015年に独立。グルメ・イベント記事や、葬儀・お墓・介護など終活に関する連載の執筆のほか、パンフレットやガイドブックなどの企画編集、グラフィックデザイン、イラスト制作などを行う。主な執筆媒体は、東洋経済オンライン「子育てと介護 ダブルケアの現実」、毎日新聞出版『サンデー毎日「完璧な終活」』、産経新聞出版『終活読本ソナエ』、日経BP 日経ARIA「今から始める『親』のこと」、朝日新聞出版『AERA.』、鎌倉新書『月刊「仏事」』、高齢者住宅新聞社『エルダリープレス』、インプレス「シニアガイド」など。2023年12月に『毒母は連鎖する~子どもを「所有物扱い」する母親たち~』(光文社新書)刊行。 ----------
ノンフィクションライター・グラフィックデザイナー 旦木 瑞穂