再び感染者が増加中!令和の日本を直撃している”すぐそこにあるエイズの危機”を回避するには?
コロナ禍が明け、マッチングアプリが定着し、パパ活が横行して、刹那的な出会いが激増した影響なのか、性感染症の患者が激増している。梅毒、淋病、クラミジアもさることながら、医療関係者を不安に陥らせているの’90年代に社会問題となった「HIV」の感染拡大だ。 【画像】ま、まさに救世主……! HIVウイルスを無力化する「夢の予防薬」 新宿・歌舞伎町前の病院で治療に当たる、新宿東口プライマリケアクリニックの大林院長は「予断を許さない状況」と警告する。 「先日発表されたばかりの『HIV検査体制の改善と効果的な受検勧奨のための研究-令和5年度 総括・分担研究報告書-』によると、’22年のHIVの検査実施数は4万2805件で陽性者数が72だったのに対し、昨年は検査数が6万3120件で陽性者数は116と1年で大きく増加しています」 ――増加の原因は? 「新型コロナウイルスというせき止めるものがなくなり、医療機関に検査に行く方が増えたというのがひとつ。出会い系アプリ、インバウンド客との接触など、人と人が飛躍的に出会いやすくなったことが背景にあります。ちなみにHIVとは『Human Immunodeficiency Virus』、つまりヒト免疫不全ウイルスの頭文字をとったもので、エイズとはHIVウイルスの働きにより発症する免疫機能が保たれなくなる病気を指します。エイズになると、肺炎や結核など、さまざまな病気に罹りやすくなります。つまり、HIVはウイルス名、エイズは病気名です」 ――エイズになると死に至ることは避けられないのでしょうか。 「正確に言えば、エイズそのものでなく、“エイズの症状による免疫力の低下によって他の病気に罹って亡くなる”というメカニズムになっています。HIVに感染すれば、もちろん生命が危険に晒されることになる可能性はありますが、治療法も薬も’90年代から進歩しています。かつては、人類を滅ぼす病気、というようなイメージで語られたこともありますが、もうそういう病気ではないでしょう。 必要以上に恐れる必要はありませんが、現在でも予防や抑制ができるだけで、不治の病ではあります。一度HIV陽性になると、一生薬を飲まなければいけません。セックスも大きく制限がかかります。しっかりした知識を持って、病気に対処することが大事です」 ――どうすれば予防できますか。 「感染経路で最も多いのは血液を介したものです。ですからたとえば、HIV感染者と一緒に焼き肉を食べたり、鍋をつついても大丈夫です。蚊が媒介することもないし、唾液で感染することもない。体の外に出るとHIVウイルスは長く生きられないのです。消毒にも弱い。HIV陽性者とセックスしても必ず伝染するわけではない。そのぐらいの感染力なので、過剰に怖がることはありません」 ――感染すると、どのような症状が出ますか。 「発熱や関節痛など、インフルエンザに似た症状が出ます。しかし、まったくの無症状のケースもある。感染がわかりにくいのがHIVの厄介な点です。エイズ発症までに、10年前後かかることがあるのもこの病気の怖いところですね。 とにかく、性行為は信頼できる身元がしっかりした人とのみすること。これが一番大事です。もし、不安になるようなセックスをしてしまったら――現在、予防薬が進歩しています。行為から72時間以内に予防薬の内服を始め、28日間続ければ、ほぼ100%の予防効果があります。『もしかしたら……』と思っても、梅毒やクラミジアだけ検査して、陰性になってホッとする方が多いのですが、こういう状況ですから、ぜひHIVの検査も行ってほしい」 ――もし、感染してしまったら? 「専門医の診断を受け、それに従ってください。いまだに誤った情報が溢れていますから、自己判断、素人判断は危険です。正しい知識、情報がとても大事な病気です。薬を飲めば症状の進行を抑え、普通の生活を送ることができます。落ち着いた対処を」 HIV――エイズは、医療の進歩によって未知の必ず死に至る病ではなくなった。だが、より身近なところに存在するようになったことも確かだ。 自分の身を守ることができるのは自分だけであることを肝に銘じたい。 撮影・文:来栖美憂 くるす・みゆう フリーライター。人文、社会問題、サブカルチャーなどを主な守備範囲とし、雑誌・新聞・ネット等、メディアを問わず、記事の取材・執筆を中心に活躍。著書多数。 取材協力・撮影協力:新宿東口プライマリケアクリニック 東京都新宿区新宿三丁目23-12新宿パンドラビル6F 03-3226-7777(平日18:00~22:00 土日祝14:00~20:30) URL:https://shinjuku.clinic/
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