東広島市で飲まれていた井戸水はなぜ汚染されたのか? 「大量の泡消火剤を処分した」米軍・川上弾薬庫との関係は?
誰が情報公開を止めているのか
疑問に思った私は、今年4月、PFAS汚染をめぐる中国四国防衛局とのやりとりなどに関する文書の開示を東広島市に求めた。 しかし、1カ月たっても反応がない。問い合わせると、担当者は「市内在住でないため『情報公開』ではなく『任意的公開』の対象となりますが、これには回答期限が設けられていないため、まだ準備できていません」という。 7月になって、ようやく回答が届いたものの、すでにホームページで公開されている資料しかなかった。 再検討をうながし、8月5日に東広島市役所を訪ねた。だが、開示されたのは1枚だけ。「現在、確認中の公文書は別途回答する」と伝えられた。その理由をたずねると、「関係機関に照会しているため」という。 照会が必要な相手は限られる。防衛省が止めているのか、米軍が認めないのか。いつ開示されるかの見通しをたずねても「お答えできません」と繰り返すばかりだった。 それから1カ月ほどして、なんの前触れもなく「広島県・市町共同利用型電子申請システム」からメールが届いた。 開示文書が添付されていたが、中国四国防衛局との間で交わされたメールの内容は大半が黒塗りされていた。東広島市が開示の是非について照会した中国四国防衛局の意向と見られる。 じつは、その1週間前、防衛省の四国中国防衛局の担当者が東広島市を訪れていた。米軍から得た2度目の回答を伝えるためだった。 説明を受けた東広島市の担当者は驚いた。その内容が7カ月前のものとは一変していたからだ。詳しくは次回報告する。 年の瀬を迎え、今年のノーベル平和賞が「日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)」に贈られた。授賞式でのスピーチで、代表委員の田中熙巳さんはこう訴えた。 <1994年12月、(略)「原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律」が制定されました。しかし、何十万人という死者に対する補償はまったくなく、日本政府は一貫して国家補償を拒み、放射線被害に限定した対策のみを今日まで続けております。もう一度繰り返します、原爆で亡くなった死者に対する償いは、日本政府はまったくしていないという事実をお知りいただきたいというふうに思います> 米軍からもたらされた被害に対し、国はなにもしない。原爆による被害と同列に論じることはできないが、PFAS汚染をめぐる国の姿勢はいまも変わらないように思える。 (次回につづく) 筆者:諸永裕司(もろなが・ゆうじ) スローニュースで『諸永裕司のPFASウオッチ』を毎週連載中。(https://slownews.com/m/mf238c15a2f9e) ご意見・情報提供はこちらまで pfas.moro2022@gmail.com
諸永裕司