WHOが緊急事態宣言…重症化リスクの高い「エムポックス」世界流行の兆し
WHO(世界保健機関)は14日、アフリカで感染拡大中のエムポックス(サル痘)を「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」と宣言した。この病気は1970年に現在のコンゴ民主共和国で動物から人への感染が確認された人獣共通感染症で、クレードⅠとクレードⅡの2系統がある。現在感染が拡大中なのはクレードⅠと呼ばれる菌株で、2022年に世界的感染流行となったクレードⅡよりも重症化リスクが高いとされる。 エムポックス再拡大で日本は大丈夫か…コンゴ周辺で感染者急増、スウェーデンで重症型初確認 7日のWHOの定例会見では今年に入りコンゴ民主共和国では前年同期比160%増の1.4万人以上の感染者と同19%増の551人の感染死が報告された。しかも、これまで感染例が報告されていなかった隣接4カ国でクレードⅠ感染が50件以上報告されているほか、多数の疑い事例があるという。さらに上記5カ国以外にもクレードⅠの症例が報告されていて、15日には、アフリカ大陸以外で初めてスウェーデンでクレードⅠの感染者が報告された。 なお、日本でも2022年7月に初めて患者が確認されて以降、累計248例の感染事例が報告されていて、今年も15例(東京12例、神奈川2例、京都1例)が確認されている。 エムポックスはウイルスを保有する動物との接触で感染するほか、感染した人の体液、血液、飛沫などでも感染する。感染した人が使った寝具でも感染したとの報告もあり、強い感染力があるとされる。「プライベートケアクリニック東京新宿院」の尾上泰彦院長が言う。 「患者の大多数は男性同性愛者ですが、女性や子供の症例も報告されています」 この病気に感染すると発熱や発疹が出て顎の下や鼠径部などにリンパ節の腫れが現れる。皮疹が顔や四肢に広がり、皮膚の2次感染、敗血症などを起こすこともある。 「私のクリニックではすでに高齢者を含む複数の患者を経験しており、感染拡大は他人事ではありません。怖いのはこの病気を日本の医師の多くが知らないことです。エムポックスを引き起こすサル痘ウイルスは天然痘の仲間であることから、天然痘の薬が効果があるとされていて、欧州では天然痘のために開発された抗ウイルス薬を承認しています。日本では、日本企業が開発したLC16と呼ばれるワクチンがエムポックスの予防に使用することが許可されています。しかし、この病気の症状を知り、それを疑ってかからなければこの病気を見過ごしてしまい、感染を広めてしまうかもしれません。日本でも早急な対策が必要だと思います」