『マルス』道枝駿佑が放つ真っ直ぐな誠実さ 『ペントレ』とのギャップが光る日向亘の好演
“ゼロ”こと美島零(道枝駿佑)のもとに集まった高校生6人が、新生“マルス”としての活動を本格指導した『マルス-ゼロの革命-』(テレビ朝日系)第2話。 【写真】板垣李光人の誕生日をお祝いする「マルス」メンバー 同世代の共感を得て“マルス”の知名度を上げるべく、彼らが「俺たちが自分の居場所を獲得するための闘い」の第一歩に選んだ案件は、トップスプリンター・不破壮志(日向亘)の殺人未遂事件の真相を暴くことだった。 日本新記録を樹立するもスポンサー契約を結んでいたスポーツメーカーと金銭問題で揉め、その重役・火野(勝村政信)に食ってかかる暴力沙汰を起こし陸上界を追放されてしまった不破。しかし、ゼロはこの新記録自体がイカサマだったのではないかと疑う。 不破が火野に掴みかかっている動画から読唇術で「金なんてどうでもいい」という彼の本音を見逃さなかったゼロは、スポンサー企業が計測器メーカーを巻き込み計測器に細工をして「幻の新記録」を更新したという真実にたどり着く。 大人の都合で高校生に嘘で塗り固めた新記録を次々に更新させ、呼び水にしようというとんでもないプロジェクトの発起人こそが、ゼロの宿敵・國見(江口洋介)だった。経済効果のために、躊躇なく一人の高校生を巻き込み彼の未来を全く無視し、自分たちの操り人形にしようとする。彼の純粋な競技愛やスポーツマンシップを平気で踏みにじるようなことを企てられる國見という男は恐ろしい。さらに彼がスポンサー契約を辞退しようとすると違約金をチラつかせて脅す。とんでもないあまりに“クソ”な世界だ。そもそも、計測タイマー自体を細工しようとするなんて、スポーツ競技の根幹を覆しかねない。 「正直者がバカを見ない世の中」を目指すゼロの信念は、きっとこの國見という男と対峙することでさらに明確になった目標なのだろう。1年前に「大人の圧力で活動停止を余儀なくされた」マルスだが、彼らの妨害に入ったのも間違いなく國見に違いないが、気になるのはどうやらやはり國見と繋がっている人物が“マルス”内にいるらしいことだ。 國見は、マルスが不破の件を動画で取り上げることを事前にどこからか仕入れており、その現場に火野を向かわせていた。さらにゼロも「この学校の人間に仲間を殺された」と明かしており、彼が失ったのは動画を一緒に撮っていた進行役のエリ(大峰ユリホ)だけでなく、撮影役のウドものようだ。 今話、監視カメラの映像を取り寄せたり、騒音処理をして会話音声のみ抽出するなど一般人ではとても対応できない離れ業をやってのけるゼロの何者感が増したのは間違いないが、特に光っていたのは、ゼロ役を演じる道枝が対峙する相手に真っ直ぐ訴える際の迷いのない切実さだ。 「正義をかざして間違いを正しても腹は満たされねぇんだよ」と告発に二の足を踏む不破に対し、間髪入れず「でも笑ってくれる。お前が正しいと思って下した決断なら笑顔で誇ってくれるはず。そういう人だろ、お前の親は」と、真っ直ぐ相手を覗き込むように伝える、その力強さに不破同様心打たれた。 また、不破役の日向は幅広い役どころでその魅力を発揮しているが、本作では家族思いで責任感の強い朴訥な陸上少年を熱演した。同じく高校生役でも『ペンディングトレイン―8時23分、明日 君と』(TBS系)では医学部志望のクールでドライな一面もある高校生・和真役を演じており、そのギャップに驚かされる。 不破が無事陸上界に復帰できた一方で、そんな不破の姿を見て球児(泉澤祐希)も親を「喜ばせたい」ではなく「悲しませたくない」という感情からくるモチベーションに限界を実感したようで、あれだけ執着していた野球部をあっけなく辞められた。吹っ切れたように“野球がそんなに好きではなかったことに気づいた”という球児はようやく他の誰でもない自身の人生を生きられるようになった。 國見の言う、もう動き出しているらしい「この国の行く先を左右する大きなプロジェクト」とはどんなものなのだろうか。國見への内通者が誰なのかも含め、気になることだらけだ。
佳香(かこ)