屈辱の開幕5カード連続負け越し……なぜ今季の広島は逆転できないのか?
昨年までの広島の驚異的な打線の“つなぎ、粘り”を生んでいたのは、決してボール球に手を出さないという約束事をチームとして共有、徹底していたことにある。特に膝から下のボールになる落ちる球に手を出さない。相手バッテリーからすれば、カウントが悪くなり、じれて、ボールひとつストライクゾーンに上げてくると、そこをミスショットせず確実に仕留める。そういうプラスの連鎖を生み出す技術力と、それを1番から9番までが徹底するチームメンタリティがあった。だが、この日は、チャンスで3人が揃ってボール球になる誘いの変化球に手を出して三振した。そこに象徴されるように、今季の広島打線は、そのチーム戦略が徹底されていないのである。ボールの見極めが早く、打者不利のカウントが多い。 4番の鈴木は復調の兆しは見せているが、まだ体の開きが早く“神っている”絶好調の状態には程遠い。ここまで12個の四球。丸が抜け、5番の不振問題にも苦しんでいる広島打線の4番に座っている鈴木に対して他球団バッテリーは勝負を避ける傾向が強くなっている。4番が孤立させられてしまうと広島の“つなぎ、粘り”というものはますます生み出し辛くなる。結局、この日は、わずか3安打。チーム打率.212、45得点は、いずれもリーグ最下位である。 もう一つの課題である中継ぎの不安も露呈した。8回、4番手のフランスアがソトに被弾。2点差とされてしまった。まだ1点差なら面白かったが、“逆転の広島”を支えてきた、もうひとつの特徴も整備しきれていない。形にはなりつつあるが、“逆転の広島”を生み出してきた条件が揃わないのである。 広島の優勝はもう不可能なのだろうか。 元千葉ロッテの評論家、里崎智也氏は、ネガティブな意見を否定した。 「まだ開幕15試合です。競馬で例えればヨーイドンで最初の1ハロンも走っていない。ここで、今年の広島はもうダメだなんて決めつけるのは暴論すぎます。何もバタバタする必要はありません。ゲーム内容を見て下さい。リーグ最多のチームの失策数(19)に象徴されるように自滅してゲームを落としています。決して力負けはしていません。今は投打のバランスが悪く不安要素もありますが、トータルで見れば投打の数字は落ち着いてきますよ。この時期の借金「7」なんて簡単にひっくり返ります。ジワジワと上がってきますよ」 開幕前の順位予想で里崎氏は、巨人にFA移籍した丸の穴は「野間と長野で十分に埋まる」と判断、「広島優勝」と予想していた。 “逆転の広島”を生み出してきた条件をどう揃えるかが、今後の浮上のカギになるだろう。まずは、広島の特徴であるチーム戦略を全員が共有、徹底することが重要になってくる。