センバツ高校野球 専大松戸、4強届かず 序盤失点、快進撃止まる /千葉
第95回記念選抜高校野球大会第10日の29日、県勢の専大松戸は準々決勝で広陵(広島)に2―9で敗れ、ベスト4進出はならなかった。エースの平野大地(3年)が序盤から捕まり、大量リードを許す苦しい展開。それでも、4番打者の吉田慶剛(同)が意地の本塁打を放つなど、優勝候補を相手に一歩も引かない戦いを見せた。春夏通じて初の8強進出を果たし、歴史を作った選手たちに、アルプス席からは温かい声援が送られた。【近森歌音、平家勇大】 滑り出しは順調だった。二回表に1死満塁のチャンスを作ると、平野が自ら適時打を放ち、先制に成功した。父勝広さん(44)は「やっと一本見られた。このままピッチングでもリズムを作ってほしい」と笑顔をみせた。 だが、相手は昨秋の神宮大会で準優勝した強豪。簡単には勝たせてもらえない。その裏、2連続完投による疲労もあってか、平野が打ち込まれ、一気に6点を奪われた。2番手でマウンドに上がった渡辺翼(3年)も四回に2点を失い、五回を終えて7点を追う苦しい展開。だが、大森准弥主将(同)の母陽子さん(50)は「全然諦めていない。子どもたちはやってくれる」と大きくうなずいた。 直後の六回表、副主将の吉田が目の覚めるような打球を左翼席に突き刺し、反撃ののろしを上げる。父の祐司さん(49)は、笑顔でダイヤモンドを一周する息子の姿に「感慨深い。大事なところで打てていなかったので、本人が一番ほっとしていると思う」と語り、目にうっすらと涙を浮かべた。 七回途中から3番手でマウンドに上がった青野流果(同)も、好救援でリズムを作った。父文紀さん(44)は「逆転を信じたい」と祈るように話した。 遊撃手として出場した中山凱(2年)の祖母征子さん(78)は、昨年5月に84歳で亡くなった夫清一郎さんと中山のツーショット写真を手に、試合の行方を見守った。清一郎さんは生前、中山の成長を楽しみにしていたという。大舞台で伸び伸びとプレーする孫の姿を見つめ、「夫に見せたかった」と語った。 九回2死から広川陽大(3年)がヒットで出塁するなど、最後まで諦めない姿勢を見せた選手たち。春夏通じて初の8強進出を果たした充実感と悔しさを胸に、夏に向けて更なる飛躍を誓った。 ◇元サッカー部応援 ○…専大松戸のアルプス席には、今春卒業する元サッカー部員2人が夜行バスに乗って応援に駆けつけた。このうちの一人、志賀丈真さんはエースの平野大地(3年)と外野手の清水友惺(2年)の友人。二回に清水と平野の連打で先制点を奪うと、「願った通りに打ってくれた」と喜んだ。試合には敗れたが、「よく頑張った。学校の仲間として誇らしい」と拍手を送った。 ……………………………………………………………………………………………………… ■ズーム ◇仲間の一言が本塁打に 専大松戸・吉田慶剛捕手(3年) 不振に苦しんでいた4番打者が六回に目覚めた。真ん中低めに入ってきたチェンジアップを捉えた打球は風に乗り、左翼ポール際に飛び込んだ。ダイヤモンドを駆けながら、これまでの鬱憤を晴らすように右手を空に突き上げた。 昨秋の関東大会後はスランプに陥り、打てない日々が続いた。4番としての責任感が焦りにつながり、スイングを崩す悪循環。甲子園に来てからも2試合で1安打と結果を残せず、夜に宿舎を抜け出し、近くの公園で素振りを繰り返した。 重圧から解き放ってくれたのは、仲間の一言だった。「打てなくても俺がいるから安心しろ」。六回に打席に向かう直前、後ろに控える5番打者の太田遥斗(3年)がこう言って送り出してくれた。自然と肩の力が抜け、持ち前の豪快なスイングが戻った。 父祐司さん(49)も持丸修一監督の指導の下、茨城県立竜ケ崎第一の選手として夏の甲子園に2度出場し、いずれも1勝している。それを上回る8強進出を果たし、ホームランも打つことができた。「父を超えられた。夏はもっと強くなって戻って来たい」。試合後にこう語る表情は晴れ晴れとしていた。【近森歌音】