【独自解説】宝塚歌劇団と女性は実質的に労働契約? “いじめ”報道否定はミス? 亀井弁護士の解説
今年9月に現役の宝塚歌劇団員の女性が亡くなったことを受けて11月10日、遺族側が会見を行いました。語られたのは、死亡の背景に「過重労働」や「パワハラ」があったとの主張です。一方、歌劇団側は10月7日の会見で“いじめ”を否定しています。憧れだったはずの舞台で、何が起こっていたのでしょうか?一体どこに責任があるのでしょうか?亀井正貴弁護士が解説します。
遺族側弁護人「劇団と女性は実質的に労働契約だ」
9月30日、宝塚歌劇団の劇団員の女性が亡くなり、警察は自殺の可能性が高いとみて捜査をしています。10月7日劇団は、死亡の経緯を調べるため外部弁護士らによる調査チームを立ち上げたと発表しました。11月10日、遺族側の弁護人が会見を開き、「女性は、過重労働・パワハラが原因で死に至った。劇団と女性は業務委託契約を結んでいたが、実質的には労働契約だった。劇団側には安全配慮義務が存在する」と主張しました。
遺族側代理人によりますと、宝塚歌劇団と女性との契約書の内容は、以下のようになっていました。 ■劇団が行うレッスンへの参加や自己鍛錬により技能の向上・容姿の管理を求められる。 ■劇団が決定した組所属・出演作品・配役・出演劇場・出演期間などについて一切方針に従わなければならない。 ■劇団の定めた稽古に参加し演出家などの指示に従わなければいけない。 ■劇団の許諾を得ずに劇団以外で演技・歌唱などを行ってはいけない。 などです。
Q. 「劇団と女性は業務委託契約を結んでいたが実質的には労働契約だった」というのはどういうことですか? (亀井正貴弁護士) 「労働契約ですと『労働基準法』が適応されるので、労働者の保護が要請されます。業務委託契約ですと、独立したもの同士の契約なので、ある程度自由になります。労働契約は支配従属関係と働いたことに対する対価を払うという二つが柱なのですが、この契約書の内容をみますと、『技能の向上・容姿の管理を求められる』や『劇団が決定したことに一切方針に従わなければならない』『劇団の定めた稽古に参加し演出家などの指示に従わなければいけない』などというところに指揮命令関係があり従属関係が出ています。また、『劇団以外で演技・歌唱などを行ってはいけない』というのも『独占的にここで働かなくてはならない』という制約を受けています。ので、この契約は実質的に労働契約だと思います。あとは、賃金体系・報酬がどういうふうになっているかによって、労働者性があるかないかの程度がわかります」 Q.どういう賃金体系だと労働契約なのでしょうか? (亀井弁護士) 「たとえば、金額が時間によって決められているだとか、どの程度支払われていたのかなども基準になります」 Q.「劇団側には安全配慮義務が存在する」というのはどういうことですか? (亀井弁護士) 「これは、労働者であろうが業務委託者であろうが問題となる論点です。一般的に安全配慮義務は、事故が起きないように会社は労働者の安全を確保しなければならない。また、過労死に至らないように、自殺する人がないように、配慮しなければならないという義務です。違反すれば損害賠償の対象になります」
【関連記事】
- 宝塚歌劇団側が14日にも調査報告書を公表へ 所属女性の死亡受け 遺族側は過重労働とパワハラ指摘
- 【独自解説】「”劇団自身が調べられている“という意識を持つべき」宝塚歌劇 団、女性死亡で相次ぐ公演中止…「内部通報者がいる」弁護士が解説
- 【独自解説】一晩で最高額1000万円、支払いのために風俗…“ホスト沼”にはまる女性たち 裏に存在する接客マニュアル、売り掛けに規制は?国会でも議論
- 【独自解説】脱北者が3倍に急増、4年ぶりに日本海側で一家4人を発見…一方中国では2600人を強制送還 北朝鮮の国境往来めぐり何が?“異変”を専門家が解説
- 【独自解説】「何か進展があったわけではない」会見から1か月、ジャニーズ新会社の名前・体制明らかにされず、退所者も続々…エージェントの方法は“独自”のものになる?