<上海だより>古き良き上海最後の砦、ユダヤ人の痕跡を尋ねる北外灘
あくまで個人的な感想ではありますが、元々の貴重な建築資源を取り壊し、中途半端な緑地化を進めるのであれば、せめてユダヤ人建築を活用することでウィリアムズバーグのような高い文化性を保持した再開発もできたのではないでしょうか。もちろん、最近日本でも普及しているようなアートやデザインと地元本来のカルチャーを共存させることは最低条件として必要となりますし、このような文化的再開発の土台がまだ定着していない中国でそのような計画を実行することは極めて困難かとは思います。
ちなみに、ユダヤ建築のすべてが取り壊されたわけではなく、優秀歴史建築に指定されているものや、「上海ユダヤ難民記念館」などは残されています。しかし、「優秀」に該当しない「歴史建築」のほとんどはどんどん取り壊されているのです。
2015年12月に新しい地下鉄の12 号線が開通し、中心部から不便だったアクセスが改善されました。今後の再開発に合わせて、交通面も計画されていたのでしょう。新しい駅の周囲にはすでに取り壊し後の大規模な建設エリアが広がり、既に建設済みの大きなビルも立ち並んでいます。
それでも、まだ古き良き上海の商店街などは裏道にかろうじて残っています。今回の取材で訪れた際にも、一部の店舗を取り壊している最中の風景も多く見られましたが、まだ最中心部では既にほぼ失われた地元色が強い商店街や路面の市場など、上海らしい雰囲気も楽しむことができるのです。このような町で、上海の古き良き小吃(シャオチー:おやつ)を頂くのが本当の上海の楽しみ方ではないでしょうか。