電気自動車は普及しないのか/苦戦の要因と未来への展望
期待のエコカーとして2009年に電気自動車(EV)が日本で初めて量産発売されて4年。エコカー市場では、ハイブリッド車(HV)、プラグインハイブリッドカー(PHV)、第3のエコカーと激しい競争を繰り広げ、燃料電池自動車(FCV)も市販へ向けて開発が進んでいます。走行中のCO2の排出をゼロにする「ゼロ・エミッション」の切り札として導入された電気自動車ですが、一般的に十分普及しているとはまだ言えないのが現状です。 電気自動車は、これから広く普及していくのか、普及するには何が必要なのか、電気自動車の未来や課題について、三菱UFJリサーチ&コンサルティングで主に企業の成長戦略に携わる齋藤隆弘氏と木下祐輔氏に話を聞きました。 ―――電気自動車の販売状況ですが、例えば日産リーフの国内での累積販売台数は2万8000台とけっして多いとはいえない状況です。電気自動車はもう普及しないのでしょうか。 「苦戦しているのは事実だが『もう普及しないか』と言われれば、それはまだわからない。判断するにはまだ早いと思う」 ―――苦戦の要因は何でしょうか? 「充電設備など電気自動車のインフラ整備、初期投資が遅れている。また、電気自動車に対する消費者のイメージがついていない状態といえる」
課題は「航続距離」と「充電」
―――普及へのカギや課題は? 「今後、充電ステーションの整備、電気自動車のカーシェア、自治体との連携を進めていく必要がある。電気自動車の課題は「航続距離」と「充電」。電池容量と充電場所の部分で、画期的な技術革新がないと厳しい。10年とか、時間がかかるかもしれない。もしかしたら、現状では1000万円程度と想定される燃料電池自動車のコストダウンの方が、先に来るかもしれないが。電気自動車も、だいたい200万円後半から400万円程度の本体価格がもっと安くなれば、消費者の選択肢に入ってくると思う」 ―――エコカーには他にもハイブリッドなどさまざまな「ライバル」がいますね。 「『つなぎ』技術だったはずのハイブリッドやディーゼルなどが低燃費を実現している。第3のエコカーも登場してきて、いまやリッター30~40キロメートル台は普通になってきている。高級車もハイブリッドになっている現状。消費者にとって『低燃費車』の選択肢が多すぎる。電気自動車への乗り換えインセンティブがない状況だと思う」